らいおん建築事務所、累計40エリアでまちづくり

らいおん建築事務所

管理・仲介業|2026年03月06日

 東京都豊島区を拠点にらいおん建築事務所はまちづくりや遊休不動産の再生を主業とする一級建築士事務所だ。まちづくり事業は全国各地で展開。一つのエリアで複数棟をリノベすることで、地域全体を活気づかせることに取り組んでいる。

2〜3年で再生費用を回収

借り上げで収益化

 らいおん建築事務所は、地域のにぎわいづくりのために不動産再生を仕掛ける。

 物件を借り上げ、もしくは購入し、自社負担で改修を行い、遊休不動産の再生を進めてきた。

 同社は2010年から事業を開始。当初からリノベを主業にすると決めての起業だった。

 嶋田洋平社長は「独立前に設計事務所で9年ほど修業したが、私の大学生時代と比較して新築の着工件数が半減していた。人口減少も社会的問題となっており、新築を建てる必要はないと感じた」と当時を振り返る。

 同社の最大の特徴は、自社の費用でリノベを実施している点にある。そのため物件は借り上げ、もしくは普通賃貸借契約を結ぶか、購入をしている。オーナーに自己資金がなくとも物件再生につなげやすい点がポイントだ。オーナーは契約満了後に再生された物件が手元に残る。引き続き収益を得やすく、再び遊休不動産化する可能性が低いという。借り上げの際には6年間の定期借家契約を結ぶことが多い。

 同社では年に8〜10棟の再生を手がける。そのうち毎年3棟が自社物件としてのリノベで、残りはオーナーからの依頼だ。築40年超の木造家屋、地方都市の中心市街地の空きビルなどの案件が多いという。

民泊に再生した物件

らいおん建築事務所で東京都豊島区雑司が谷で民泊に再生した物件

 再生後の物件の用途は幅広い。民泊施設や賃貸住宅、創業支援を行うオフィス・店舗型のインキュベーション施設などだ。現在の運営物件は、民泊が5件、賃貸住宅が4戸、オフィス・店舗型インキュベーション施設を2棟借り上げて、転貸。テナントから賃料収入を得ている。

再生されたビルに入居した整体院

創業支援を行うインキュベーション施設としての再生も行う。写真は再生されたビルに入居した整体院

 借り上げの場合は2〜3年程度で改修費用を回収し、残り3〜4年間で自社の利益を確保するビジネスモデルだ。

 「設立当初から、リノベのデザインを引き受けるだけでは経営の安定化は厳しいと考えていた。再生物件の運用まで行うことで、自社にとっても安定的な賃料収入が入るというメリットがある」

 民泊、賃貸住宅ともに稼働率は高い。民泊の場合は、住宅宿泊事業法(民泊新法)により、稼働上限は年間180日以内と決まっているが、すでに1年以上稼働している2件の稼働日数は、ほぼ毎年上限に達している。そのため、民泊として稼働できない時期はマンスリーの賃貸住宅として貸し出しているという。

 賃貸住宅は借り上げの場合、入居率は90%超。募集開始から2カ月以内には満室となっている。

 こうした遊休不動産の再生を一つのエリアで複数棟実施。観光客や新店舗の誘致、それによる雇用の創出、移住者誘致などにつなげ、4〜5年ほどでエリア全体を活気づけることに成功してきた。これまで累計40以上のエリアでまちづくりを行ったという。

 売上高は非開示だが、全体の3分の1が再生した物件からの賃料収入。リノベ・新築物件の設計・監理業と、まちづくりのコンサルティング事業も、それぞれ3分の1程度を売り上げる。

人脈が事業基盤に

 現在、らいおん建築事務所で行っているいくつかの地域での遊休不動産の再生の下地には、全国各地で行ってきた「リノベーションスクール」によってできあがった人的ネットワークがある。

 リノベーションスクールとは、エリアの再生を行う教育プログラムだ。遊休不動産とエリアの再生事業案について、プロモーションや資金調達までまとめた企画を物件のオーナーにプレゼンテーションを実施。再生プロジェクトを事業化する。嶋田社長は11年から18年まで、このプログラムを行う会社の代表を務めており、累計100回以上開催。各地でまちづくりに関心・意欲のある人達や公務員との人脈を築き上げてきた。

 その結果、再生に取り組む際には、そのエリアのまちづくりに興味・関心のある知り合いが名乗り出てくれる場合が多く、現地で共に事業に取り組んでくれるのだという。遊休不動産についても、再生に興味のあるオーナーをそうした人脈から紹介してもらえるため、リノベの実施までがスムーズに進むことが多い。インキュベーション施設として再生する際にも、こうした人脈からエリアで事業を立ち上げたい希望者が紹介される流れができあがっている。

 同プログラムを通じて、全国各地でリノベーションまちづくりの戦略作りに取り組んだ経験から、エリアの課題や、どういった施設が必要とされているのかを見抜く力を磨くことができた。

 例えば、民泊は基本的に観光地で展開するが、東京都豊島区で運営する民泊はアニメ好きの外国人をターゲットにリノベを実施した。外国人の興味を引きやすい、古くからの町並みが特徴だ。加えて、手塚治虫をはじめとした多くの漫画家が住んだトキワ荘があり、アニメ関連ショップが多い池袋エリアに近いという要素がそろっていた。

 温泉街である静岡県熱海市の民泊では、週末に旅行する20代後半から30代前半の女性3〜4人組をターゲットに設定。具体的なペルソナ設定を行い、狙った客層での高稼働につながっている。

民泊を住居へ転用

 今後は建物の使用用途を柔軟に変更することにも取り組んでいく。

 嶋田社長が13年から物件再生に携わる熱海市では、25年に新規事業として、数十年にわたり空きフロアになっていた市中心部のビルの上層階を民泊施設として改修した。

 同市は、現在は観光地として宿泊ニーズがあるが、本当の都市課題はファミリー層が住める適切な賃貸住宅が市内に少ないことであると嶋田社長はみる。そのために、まずは民泊としての再生を行うことで、物件を収益化。投資回収を行った後に住宅に転用する構想を、地元の不動産会社であるマチモリ不動産(静岡県熱海市)と一緒に取り組んでいる。

 「今後はまちづくりの案件に安定的に取り組むためにも、会社の組織化と採用を強化したいと考えている」

 同社の従業員は4人。まちづくりの案件に安定的に取り組むためには人員が足りない。従業員の勤続年数の長期化と、ベテランスタッフによる新人教育を実施できる環境づくりに取り組む計画だ。

 30年までに自社での不動産活用を20プロジェクトにまで増やすこと目指す。

(野中)
(2026年3月2日24面に掲載)

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