1月1日に発生した石川県能登地方を震源地とした大規模な地震(以下、能登半島地震)の影響で、賃貸住宅も被災し、漏水や設備の故障が多発。管理会社は被害の確認や対応に追われる。
9日間で電話1500件超も
住宅被害6779棟
多数の死者や被災者を出した能登半島地震により、賃貸住宅を管理する管理会社は入居者や物件の被害への対応に奔走する。1月1日午後4時10分、最大震度7の地震が発生し、14日午前9時時点で能登地震による死者が220人を超えた。住宅への被害は、同時点で、全壊が石川県で396棟、富山県で16棟、新潟県で14棟、半壊は石川県で29棟、富山県で56棟、新潟県で405棟となっている。そのほか一部破損や床上浸水などを含めると、全体で6779棟が被害に遭っている。
100戸で漏水発生
震度5強を観測した金沢市を中心に1万836戸を管理するのうか不動産(石川県金沢市)では、管理物件のうち7棟約100戸で、地震による電気温水器の故障や排水管が外れたことによる漏水被害が発生。このほか、金沢市田上地区で土砂崩れが発生した影響により、管理物件1棟が傾くなどの被害に遭った。2日、3日の両日にはそれぞれ約30人の社員が、入居者からの電話対応や緊急性の高い案件の対応に追われた。苗加充彦社長は「入居者からの問い合わせは9日時点で1000件を超えている。漏水の修理といった大規模な被害の対応に追われ、壁の亀裂やドアのゆがみといった被害についてはすぐには対応できていない。震災発生時から対応を続けてきた社員にも疲労が見られる」と語った。
専用ページを開設
金沢市を中心に約2万戸の賃貸住宅を管理するクラスコグループ(同)は、地震を受けた入居者からの問い合わせへの対応に追われている。地震発生日からの9日間で電話が1581件、入居者アプリからの問い合わせが496件あった。そのうち、512件は設備の不具合で、主に漏水やガス関連設備の故障などの相談が寄せられた。
2日にホームページ上に被災者専用の特設ページを開設。緊急性が高くない設備の故障などの内容は特設ページから問い合わせするよう誘導している。特設ページには、設備が故障した際の対応マニュアルを掲載。入居者自身が設備の修理を行えるよう導線を整えた。
水漏れ30戸弱
震度5強を観測した石川県小松市の賃貸住宅では、配管に亀裂が入ったことによる漏水被害が多発した。同市内を中心に2445戸を管理する志乃丘商事(石川県小松市)は管理物件30戸弱が漏水の被害を受けた。1日午後5時から、問い合わせが相次ぎ、全従業員と設備会社スタッフの8人がかりで居室部にたまった水の吸い取り作業を行った。対応は深夜に及び、その後も漏水に関わる問い合わせへの対応は9日の取材時点でも続いていた。篠岡沁一郎社長は「5階建て1棟25戸の物件では、その半数以上が漏水や浸水の被害に遭った。揺れの影響が大きい5階の部屋は全戸が被害を受け、5~10cmの水がたまった部屋もあった」と話す。配管の亀裂のほかには、電気温水器や給湯器の故障が相次いだ。
石川県野々市市は震度4を観測した。2832戸を管理する絹川商事(石川県野々市市)は、地震が発生した1日午後4時以降に、社員全員の安否確認を完了。同日から災害対策チームを立ち上げた。社長を含めた10人体制で三つのグループに分かれ、管理物件、自社の建物や社内データなどに関して被害状況の確認を行った。入居者からの問い合わせの多くは、水漏れや建物への亀裂に関する内容だった。
中でも、3階建て約20戸の物件では、半数近くの部屋が漏水の被害に遭った。帰省中で部屋を空けている入居者も多かったことから、帰省先に連絡を取り、合鍵で室内の状況を確認。水の吸い取り作業を行い、入居可能な状態への応急処置を完了した。
新潟市内で液状化
最大震度6弱を観測した新潟県も被害は大きい。新潟市西区では地震により地面が液状化。新潟県大手のリビングギャラリー(新潟市)が管理する西区の管理物件では、駐車場の陥没や地盤の隆起による物件の傾きが発生。アパート5~6棟が建物被害を被った。
該当物件の入居者は自己判断で仮住まいへの避難を行っている。入居者から寄せられる地震の影響によるトラブル相談は、6日時点で約550件に上った。約6割がガスの停止についてだったが、同社が外部委託するコールセンターで、入居者へ復旧方法の共有を行うことで対応。2日から管理部門の社員6、7人が緊急出勤をし、管理物件の建物巡回を進めている。
電気温水器が転倒
富山県を商圏とする朝日不動産(富山市)では、駐車場や物件敷地の液状化による地割れなどの被害があった。電気温水器の転倒による漏水が5棟で発生。一部では漏電につながりエレベーターが動かなくなった。社員が駆け付け、元栓を締める一次対応を行い全棟断水にした後、工務店と連絡を取り工事を進めた。
3日前倒しの2日から営業を開始。社内で有志を募り40人ほどが出社し、入居者らからの電話対応を行った。2~6日までの5日間で電話連絡は354件あり、社員は現地の確認や工事の手配などを行っている。石橋正好社長は「被災した建築物の危険性などを判定する、応急危険度判定が始まった。今までの住宅に住むことが難しいと判断した人からの、相談が増えてきている」と話す。
(2024年1月22日1面に掲載)