企業提携で入居者特典も視野
決済の連携、推進
グループで収益不動産の開発・売買仲介を行うミガロホールディングス(東京都新宿区)は開発物件の付加価値向上として、グループで開発した顔認証システムの導入を推進。事業としての将来性にも期待を寄せる。
中西聖社長は「デベロッパーとして長期にわたって競争力を持つ物件を造らないといけない。ICT(情報通信技術)がどんどん進化している中、ITと住宅をかけてアドバンテージをつくることを考え、顔認証に行きついた」と話す。
グループ会社プロパティーエージェント(同)の開発物件には、DXYZ(ディクシーズ:同)が提供する、顔認証システムの「FreeiD(フリード)」を導入している。
顔認証により、物件のエントランス・玄関・メールボックスなどの鍵が不要となり、セキュリティーのレベルも上げることができる。
FreeiDに顔の情報を登録することで、住宅設備を超え自宅外でも利用することができる。さらに差別化になるのは、実証実験を進める決済機能だ。金融機関や決済代行会社などとの連携が進めば、店舗などで顔認証をするだけで支払いが完了する。
「顔認証というのは基本的に入退室、本人確認、決済、この三つの機能を持っている。決済の機能が加わってくるとなると、マルチプラットフォームとして価値を持つ。ポイントをためる、クーポンを送るということが、企業の枠、業界の枠を越えてできるようになる」(中西社長)
決済機能により、入居者と事業者双方にとってのメリットが生まれるという。入居者にとっては、提携先の店舗や企業が増えていくと、特典などの提供数も広がり、UX(ユーザー体験価値)が上がり続けるとみる。
例えば、アミューズメント施設のゲートを11時半に通ったことがわかるとその記録を基に、施設の近くの飲食店から50円のクーポンを送ることができるといった具合だ。一方、事業者は顔認証により、リアルな生活のデータを収集。それを基にレコメンデーションやクーポンのストックができる。マーケティングプラットフォームとして、精度の高い情報を提供できる点で事業者にとってのメリットにもなる。
アパート導入検討
顔認証システムの普及のため、現在、海外展開とアパートへの導入の二つを検討する。
海外については、東南アジアのデベロッパーとの協業を模索する。
「特許の関係で難しい部分もあるが、顔認証では未開拓の市場。世界がマーケットになっていく。あとは戦い方と政治的なアライアンスになると考えている」と中西社長は語る。
顔認証の場合、導入時と月額の収入があり、導入数の伸びが安定的な売り上げにつながる。
二つ目にアパートでの展開だ。これまで分譲マンションや賃貸マンション、オフィス、商業施設でも実績を増やしてきたが、アパートへの導入にも目を向ける。「顔認証による賃料の伸びを実感しているので、プロパティエージェントで開発するアパートにも入れようかと考えている。賃貸マンションと異なり、玄関部分だけなのでコストも抑えられる。アパートの市場は大きいので目を向けていく」(中西社長)
ミガロホールディングス
東京都新宿区
中西聖社長(47)
(2024年7月1日14面に掲載)




