ホームインスペクションを早期から取り入れ、中古物件の取引を推進してきたリジュネビルド(大阪府枚方市)。「ほかの人にできることは自分にもできる」をモットーに事業を多角化し、経営を安定化させてきた。2024年に創業45年を迎えた。
住宅診断を推進、顧客に安心感
寄り添いを重視
「顧客に寄り添うことを経営上最も大切なこととしてきました」。妹尾和江社長はこう話す。顧客と信頼関係を築き、取引の安全性を担保することに重点を置いてきた。
「特に若い頃は何でもやりましたし、今でも気になったことは突き詰めて勉強します。これが自分の武器になり、規模は小さくとも長期の安定経営が可能になったのではないかと思っています」と語り、顧客の要望に沿う姿勢が、結果として事業多角化につながった。
創業45年を迎え、従業員は6人。営業は創業時から一貫して妹尾社長が1人で担当している。売買仲介に加え、工事、不動産コンサルティング、インスペクション、講演の五つを事業の柱とする。
妹尾社長は1979年、木田工務店(現リジュネビルド)を創業した。当時、3人の小さい子どもを抱え正社員として勤務することが難しく、不動産業界の経験がなかったにもかかわらず、1人で起業に至った。
「祖母から『ほかの人にできることは自分にもできる』と言われて育ちました。当時の不動産会社は、怖そうな人も多く、私ならきっと多くの顧客が来てくれると思いました。当時、女性の不動産営業はほぼおらず、若い女性1人となめられることもありました。だからこそ、真面目に誠実に顧客に対応することを大切にしてきたのです」と妹尾社長は振り返る。
元公園を住宅に
住宅開発を目的に、インフラの整備から行った公園跡地
顧客に寄り添う姿勢が、柔軟な発想も生む。
2021年3月に建物の引き渡しが完了した府内の新築住宅では、「緑の多いところに住みたい」という施主の要望から物件探しをした。だが、一般的な住宅用地では条件を満たす物件が見つからなかったため、元々公園だった市の所有地を住宅用に開発。上下水道、ガス、電気もなく、インフラを引くところからのスタートだったという。「公園跡地はたまたま古い知人が仲介してくれました。近隣に少し問題もあり難しい案件でしたが、広々とした庭を持つ住宅が完成し、ご夫婦は本当に気に入ってくれています。不動産会社冥利(みょうり)に尽きる案件でしたね」と顔をほころばせる。
取引の安全性担保
中古物件の取引の安全性を確保するため、長年注力するのがホームインスペクションだ。
妹尾社長は創業当初から、中古物件の仲介の際、自ら床下に潜り、土台など目に見えない隠れた部分の確認をしていたという。「室内はきれいでも、土台が腐っているということがあります。そういった場合に考えられるリスクや将来に向けた提案を適切に行えるようになるために、独学で建築を学びました」と話す。
09年ごろ、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会(北海道札幌市)の長嶋修理事長に出会ったことをきっかけに、妹尾社長本人もホームインスペクター(住宅診断士)の資格を取得。住宅診断を進める。
ここでも大事にするのが顧客目線だ。第三者性を担保するため、自社が取り扱う物件のホームインスペクションはすべて他社に依頼。同様に、自社で行うホームインスペクションは他社仲介物件のみとしている。
「自社や関連会社でホームインスペクションを行うと、仲介を逃してしまうことを考えて、インスペクターとして踏み込んだ内容を書くことを遠慮してしまう。常に重要になるのは消費者目線で提案をすることです」と妹尾社長は話す。
業界地位向上図る
不動産業界の地位向上のため、社会問題の解決につながる事業として、空き家の活用促進に絡めたインバウンド(訪日外国人)事業と、居住支援事業の強化を狙う。
インバウンド事業についてはすでに3組への物件提案を進めている。外国人だけでなく、現在海外在住で、日本に帰国する日本人に対して、空き家をメインに提案する。
居住支援に関しては、妹尾社長が副理事長を務めるNPO法人あんじゅうサポートクラブ(兵庫県西宮市)で行っている住宅確保要配慮者への居住支援を、さらに強化していく予定だ。
「取引に関する倫理を学ぶための業界団体でのセミナーなども今後さらに増やしていきます。業界のためになることに力を注いでいきたいです」(妹尾社長)
(柴田)
(2024年10月7日20面に掲載)




