特典付きで賃料約1.5倍
ユーミーらいふグループで約1万4000戸を管理するユーミーClass(クラス:神奈川県藤沢市)は、大学が撤退したエリアでの学生向け物件の利活用を進めている。地域の飲食店も巻き込んだサービスを展開し、対象物件の入居率は約7ポイント改善。地域活性化にもつなげる。
同社は、元学生向けの物件を家具・家電、特典付きの「ホテル賃貸」としてリニューアル。2月末までに延べ401戸をホテル賃貸として運営する。オーナーから借り上げ、入居者との契約は普通賃貸借契約で転貸する。共益費込みで4万5000円程度の物件を、水道光熱費などを同社の負担とし月額7万5000円程度までアップ。平均で、前賃料の1.5倍程度まで上げているという。
ホテル賃貸の入居者が使用できるシアタールーム(上)やジム
ホテル賃貸の料金体系は、入会金5万円、入居中は水道光熱費込みの月額賃料を支払うのみだ。通常では賃貸住宅に入居する際の初期費用である、保証料や鍵交換代、仲介手数料などが不要となる。そのほか、更新料や退去時のクリーニング費用も不要だ。
会員向けサービスもある。予約制でシアタールームやトレーニングルームを使用でき、バーベキューセットやサーフボードなどを借りることも可能だ。追加料金は発生しない。そのほか、地域の飲食店13店が協力し、会員向けに割引クーポンを配布。農家である管理物件のオーナーから提供された野菜や果物を、同社のスタッフが無料で届けるサービスもある。年3回、協力店で入居者らを招いた交流会も開催している。
ホテル賃貸を展開する神奈川県平塚市・旭エリアでは、2023年3月末に神奈川大学の湘南ひらつかキャンパスが撤退。特別空室対策室の橋本英実課長は「旭エリアは学生の街として栄え、物件も学生向けの造り。駅からのアクセスが良くないため、オーナーや当社だけでなく、地域の飲食店にとっても大きな痛手となった。
ホテル賃貸として運営する同社の管理物件の内観
学生以外の顧客層を取り込む必要があり、ホテル賃貸の開始に至った」と話す。大学の撤退前の入居率は98%程度で推移していたが、撤退確定後は91.9%程度まで落ち込んだ。その後、ホテル賃貸の人気が高まったことで25年2月末は99.2%まで入居率が回復している。
前賃料より大幅に賃料が高くなることから、ホテル賃貸の導入当初は仲介会社からの賛同がなかなか得られず、入居付けに苦戦した。だが契約した仲介店に対し、入居者が退去するまで家賃の5%を支払うモデルとしたことで入居促進につながったという。
今後、ホテル賃貸の運営エリアを拡大する。現在の平塚市西側のエリアから徐々に平塚市全域、小田原エリアなどにも展開し、2030年に1000戸の運営を目指す。
(2025年3月17日2面に掲載)