コリビングや賃貸住宅、ホテルの企画・運営を行うLivmo(リブモ:東京都港区)は「ユーザーファースト」を方針に据え事業の幅を広げてきた。入居者が望む暮らし方の提供を目指し、仲介事業から管理・企画事業まで展開。ワークスペース付きシェアハウスであるコリビングの供給に力を入れる。
コミュニティーづくりに着目
無店舗で賃貸仲介 口コミで拡大
Livmoがコリビング事業に力を入れる理由は、賃貸・売買仲介における顧客の問題解決が根底にある。
2024年6月期の売上高は2億1979万円。そのうち7割がホテル事業、3割がコリビング・賃貸住宅の管理・運営事業だ。
同社は12年に設立し、東京都内を商圏に賃貸・売買仲介から事業を開始。それ以降現在に至るまで事務所のみを構え、無店舗型で経営してきた。顧客の理想の暮らしを聞き、希望に添うように向き合うことを方針とする。
同社の特徴はワークショップを通じて集客を行ってきた点だ。
ワークショップは月に1回程度開催。会議室やカフェを借りて、参加者で理想の部屋について考えるほか、家探しのこつを教える。同社の活動を「フェイスブック」や口コミで知った顧客が、「この会社なら自分の理想の部屋を探してくれるかもしれない」と思い、反響につながったという。
源侑輝会長は「一般顧客にとって敷金と礼金の違いや、保証会社は本当に必要なのかなど、わからないことが多いという相談が多かった」と話す。
同社はそうした疑問を解消しながら、理想の部屋探しをサポートするスタイルを取る。部屋が手狭なため広い物件に引っ越したい顧客に、片付け方を教え、仲介せずに解決した事例もある。
報酬が発生するのは物件を仲介した時点となるため、この案件で利益は発生しなかった。しかし、こうした真摯(しんし)な対応が評価され、口コミで顧客が拡大。初年度はスタッフ3人が、150件仲介し、そのうち9割以上が口コミ経由だった。
一方で顧客の理想をかなえる部屋を探すことは難しく、自社で物件企画に取り組んだのが、シェアハウス事業とその流れをくむコリビング事業だ。
付帯サービス充実 別荘付き物件も
シェアハウス事業は14年に物件を借り上げて転貸することから始めた。
「1人暮らしを始めた人たちの多くが『住む部屋は帰って寝るだけなので家賃を下げたい。でも東京に単身で出てきたので誰かとコミュニケーションは取りたい』という要望を持っており、シェアハウスの必要性に気が付いた」と源会長は話す。
戸建てをシェアハウスとして活用していたが、キッチンが狭いことや、大きめの広間の代わりに各居室を増やしてほしいといった要望がでてきた。そこでリノベを通じてシェアハウスを自社で企画・運営するようになった。それに加えて、オーナーから管理を受託。延べ50棟1000戸超を管理してきた。
シェアハウスの運営を続けるにつれ、顧客からは、コミュニティーに興味はあるものの各居室のプライバシーを保った物件を求める声が上がってきた。そこで、コリビングへと事業をシフトしていった。
同社のコリビングの特徴は各居室を確保しつつも、付帯サービスが充実している点にある。別荘を使うことができる、食事が無償で提供される、ワークスペースがある物件などを揃える。中には、短期滞在ニーズをかなえるため、宿泊施設として使えるほか、マンスリーマンションとして貸し出す物件もある。
その結果、オーナーの間で「おもしろい物件を企画している会社がある」と評判になり、管理委託が増加。5月12日時点で8棟114戸を管理・運営する。
今後は顧客の要望に応え、よりプライバシー性を保持できるよう、各居室に水回り設備を備えたコリビングの企画に力を入れる。28年にはホテルやオフィス、カフェも併設した物件「プロジェクトMARS(マーズ)」を竣工する予定だ。同計画のためにファンド事業を始め、まずは1億円の調達を目指す。
Livmo
東京都港区
源侑輝会長(36)
(野中)
(2025年5月19日20面に掲載)