人口減少と高齢化が進む地方都市において、空き家・空き店舗の増加は構造的な課題となっている。神奈川県西部に位置する小田原市も例外ではない。同市を拠点に活動する旧三福不動産の山居是文代表は、仲介・リノベーション・情報発信を一括で手がけ、既存の不動産に人を呼び込む。
20店の開業を誘致旧歓楽街に活気
―まずは、御社の象徴的な事業である再生事例について教えてください。
小田原駅の東側にある宮小路エリアは、私たちが開業を支援している重点エリアの一つです。ここは、かつて200軒以上のスナックが立ち並んでいた旧歓楽街ですが、10年ほど前にはそれが20軒前後まで減少していました。そこで当社が2015年に支援したのが、ゲストハウス兼バーの開業です。単なる宿泊施設ではなく、1階をバーとして地域に開かれた設計にすることで、地元客と宿泊者が自然に交わる場をつくりました。結果的に人の流れが生まれ、周辺への出店が連鎖していきました。
小田原駅から少し離れた場所への出店を支援
―改修内容や投資規模はどのようなものだったのでしょうか。
元はカフェレストランだった建物で、当社で実施した改修費は500万円弱、そのほか店主らによるDIYも行っています。16年の開業以降、地元客と旅行者の双方に支持される店に育ちました。この店を含め、宮小路エリアでは結果として当社が関与しただけでも約20店舗が新たに開業しています。投資額以上に、エリア全体への波及効果が大きかった事例です。
―こうした取り組みを行うようになった背景は何だったのでしょうか。
私は小田原市で生まれ育ちましたが、大人になるにつれて街が少しずつ寂しくなっていく感覚がありました。そのような状況について、どうしたものかと考える中で「良い不動産会社があれば、空き家や空き店舗はまだ生かせるのではないか」と思ったのが現在の活動の原点です。単に貸す・売るではなく、不動産を通じて街の活用方法そのものを更新する仕事ができないかと考え、14年に不動産会社として当社を立ち上げました。
ゲストハウス兼バーの改装前後
人と場所をつなぐ中間支援の役割
―御社の事業モデルの特徴を、あらためて教えてください。
仲介・リノベ・情報発信を一括で行っている点です。地方都市では、家賃が低めの物件が多くありますが、それらの仲介手数料だけでは不動産会社の事業として成立しにくい。一方で、借り手がいないわけではなく、お金に困っていないから無理に貸す必要はないとか、古くなったものを貸すためにわざわざ修理しないといけないのが面倒とか、貸し手側の事情で止まっているケースが多い。そこで、改修まで含めて引き受け、さらに情報として発信することで、事業としても街としても循環するモデルを構築しています。




