旧三福不動産 山居 是文 代表 リノベ×情報発信で出店集める

【企業研究vol.316】旧三福不動産

インタビュー|2026年02月04日

旧三福不動産 山居是文代表

 人口減少と高齢化が進む地方都市において、空き家・空き店舗の増加は構造的な課題となっている。神奈川県西部に位置する小田原市も例外ではない。同市を拠点に活動する旧三福不動産の山居是文代表は、仲介・リノベーション・情報発信を一括で手がけ、既存の不動産に人を呼び込む。

20店の開業を誘致旧歓楽街に活気

―まずは、御社の象徴的な事業である再生事例について教えてください。

 小田原駅の東側にある宮小路エリアは、私たちが開業を支援している重点エリアの一つです。ここは、かつて200軒以上のスナックが立ち並んでいた旧歓楽街ですが、10年ほど前にはそれが20軒前後まで減少していました。そこで当社が2015年に支援したのが、ゲストハウス兼バーの開業です。単なる宿泊施設ではなく、1階をバーとして地域に開かれた設計にすることで、地元客と宿泊者が自然に交わる場をつくりました。結果的に人の流れが生まれ、周辺への出店が連鎖していきました。

小田原駅から少し離れた場所への出店を支援

小田原駅から少し離れた場所への出店を支援

―改修内容や投資規模はどのようなものだったのでしょうか。

 元はカフェレストランだった建物で、当社で実施した改修費は500万円弱、そのほか店主らによるDIYも行っています。16年の開業以降、地元客と旅行者の双方に支持される店に育ちました。この店を含め、宮小路エリアでは結果として当社が関与しただけでも約20店舗が新たに開業しています。投資額以上に、エリア全体への波及効果が大きかった事例です。

―こうした取り組みを行うようになった背景は何だったのでしょうか。

 私は小田原市で生まれ育ちましたが、大人になるにつれて街が少しずつ寂しくなっていく感覚がありました。そのような状況について、どうしたものかと考える中で「良い不動産会社があれば、空き家や空き店舗はまだ生かせるのではないか」と思ったのが現在の活動の原点です。単に貸す・売るではなく、不動産を通じて街の活用方法そのものを更新する仕事ができないかと考え、14年に不動産会社として当社を立ち上げました。

ゲストハウス兼バーの改装前後

ゲストハウス兼バーの改装前後

人と場所をつなぐ中間支援の役割

―御社の事業モデルの特徴を、あらためて教えてください。

 仲介・リノベ・情報発信を一括で行っている点です。地方都市では、家賃が低めの物件が多くありますが、それらの仲介手数料だけでは不動産会社の事業として成立しにくい。一方で、借り手がいないわけではなく、お金に困っていないから無理に貸す必要はないとか、古くなったものを貸すためにわざわざ修理しないといけないのが面倒とか、貸し手側の事情で止まっているケースが多い。そこで、改修まで含めて引き受け、さらに情報として発信することで、事業としても街としても循環するモデルを構築しています。

リノベ前後

スパイス菓子やベーグルを販売する店(右)。改装前は焼肉店だった

―創業支援にも力を入れている理由は何でしょうか。

 会社設立前の12年から、小田原市内でコワーキングスペースを運営していました。そこでイベントなどを通じて「物件を借りて何かをやりたい」と考えている人が意外と多いことに気づいたのです。ただ、その人たちはまだ店舗を借りる段階にはいない。だからこそ、創業の一歩手前から私たちが関わり、事業が形になるところまで伴走する必要があると考えました。

―商工会議所と連携した創業支援の内容について教えてください。

 15年から商工会議所と連携し、「創業塾」と呼ぶセミナーを実施しています。加えて、さまざまな団体と連携しながら、事業計画の壁打ちや金融機関への融資相談への同行、マルシェ出店によるテストマーケティングなど、実践的な支援も重視しています。これまでに約125組の創業を支援してきましたが、その中の1人が、先ほどのゲストハウス兼バーの事業者でした。

取り組み概要

―出店を支援する際に、特に重視している点は何ですか。

 「この人が、この場所で、本当に続けられるか」という点です。補助金があるからやる、という動機の人より、補助金がなくてもやる覚悟があるかどうかを見ています。ボトルネックは物件の数ですね。オーナー側の事情として、お店はやっていないが住居に出入りする玄関として使っていたり、荷物をたくさん置いていたりするため貸し渋られるケースがあります。そういう状況をいかに解決していくかという点が重要で、そこには出店者側の思いも大事になります。

人を呼び込むメディア戦略

―情報発信のためのメディア運営を事業に組み込んでいますね。

 当社が扱う物件は、駅前ではなく駅から離れたエリアのものが中心です。そうした場所では、「わざわざ行く理由」をつくらなければ出店は成功しません。前職で広告や企画に携わっていた経験もあり、不動産会社自身がエリアや店舗の魅力を編集・発信する役割を担うべきだと考えました。

―具体的には、どのような情報発信を行っていますか。

 物件の仲介をした後も、店舗の様子やリノベ事例を継続的に紹介しています。物件のスペックではなく「なぜこの場所なのか」「どんな改修をしたのか」「どんな思いで事業を始めたのか」を丁寧に伝えます。当社サイトの月間PV(ページビュー)は約10万(25年12月末時点)ですが、物 件探している人だけでなく、個性のある店を探しに来る読者も多く、次の出店希望者の確保にもつながっています。

ホームページ

ホームページでさまざまな情報を発信している

―今後の展望について教えてください。

 短期的な利回りを追うより、既存ストックを生かしながら事業者を支援し、情報として発信し続けることで、エリア全体の不動産価値を底上げしたいと考えています。今後は、店舗と宿泊施設を組み合わせた複合的な活用や、小田原市と同規模の近隣都市への横展開にも取り組む予定です。

 

会社概要

社名:旧三福不動産
所在地:神奈川県小田原市栄町1-16-19 旧三福ビルヂング2F
設立:2014年9月
資本金:990万円
事業内容:賃貸・売買不動産の仲介、リノベーションなど

代表プロフィール

1978年、小田原市生まれ。東京農工大学農学部を卒業後、オフィスや公共施設の空間デザインを手がける会社に勤務。その後、小田原市に入庁。ウェブの企画・ディレクションを経て、2012年から拠点を小田原に戻し、コワーキングスペースの運営を開始。14年に旧三福不動産を設立。

(2026年2月2日7面に掲載)

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