不動産会社のAI活用の取り組みにおいて、導入から実際の施策、目指す方向までを紹介する連載第5弾。TAKUTOは、社内研修やAIに関する資格の取得により従業員のAIリテラシー向上に取り組む。工事見積もりの確認をAIで行い業務削減を目指す。
「管理業界は大変革に」
研修で理解深める
4万9400戸を管理するTAKUTOは、全社的にAIの活用を進めている。特に強みとする工事部門では、AIを用いた見積金額の適正チェックシステムを開発中だ。
同社が社内で本格的にAI活用を推進し始めたのは2024年ごろ。まず研修により社員のAIリテラシー向上に着手した。外部講師による社内セミナーを複数回開催。AIの基礎知識や他社事例、情報漏えいリスクについて理解を深めてきた。加えて全社員に「生成AIパスポート」の資格取得を推奨している。
AIサービス開発の体制面では自社でエンジニアを抱えず、外部ベンダーと連携して開発を進める方針をとる。トップダウンでの推進も特徴で、社長自らが生成AIに会社の沿革や現状データを学習させ、経営戦略の検討に活用している。その成果を社内へ共有することで、全社的な利用拡大を図る。現在は情報管理を徹底したAI利用環境が整備されており、社員は会議の議事録要約やプレゼン資料の作成など日常業務に活用。従来は半日程度を要していた資料作成時間を大幅に短縮する効果が出ている。
4月からは自社主導で開発したシステムにおいて、原状回復や修繕工事の見積もり確認をAIで行う仕組みを第1フェーズとして稼働させる予定だ。同社は企画からデザイン、施工までを一気通貫で行う工事内製化を強みとしている。新システムでは、協力会社から月間約1000件提出される見積もりデータと過去の蓄積データを照合し、金額の妥当性を自動判定する。導入予定のシステムにより、見積もり確認や修正指示にかかる工数を削減し、月間約200時間の業務軽減を見込む。確認精度の向上によって、後工程での差し戻しなど付随業務の削減も期待されている。
太田卓利社長は「AIによって、工事の部分で人件費を含めた販管費が圧倒的に下がるので、工事事業の営業利益は圧倒的に上がると考えている。データがどんどんたまって即座にAIがそれを分析するため、マーケティングや企画をすぐに出せる。人に頼って1週間かかっていたのが、オーナー訪問の場で工事のデザインや見積もりまで数秒で提案できるようになるだろう」と語る。
データで精度向上
今後の展開として、工事部門システムは第2フェーズへの移行を予定している。金額や分析レポートの自動修正、種別やエリア、オーナー属性に応じた条件ルールの自動適用などを実装予定だ。第1フェーズで蓄積したデータを基に、AIのさらなる判断精度向上を目指す。将来的には職人など外部事業者も含めたシステム連携も視野に入れる。
プロパティマネジメント(PM)部門においては、アセットマネジャーやオーナーとの業務効率化を計画している。現在メールや電話で行っている情報共有やレポーティング業務をシステムに集約し、AIと連携させることでコミュニケーションコストの削減を図る。
「先々、管理会社の仕事の中で人が行うのはオーナーやPM担当になるだろう。手を動かすよりも頭や足を動かす人が一番必要になっていく。AIが出てきて自分で触りだしてまだ数年だが、管理ビジネスとめちゃくちゃ合う。管理業界は大変革になる」
(2026年4月13日4面に掲載)





