クラスコ・ホールディングス(以下、クラスコHD:石川県金沢市)は全社的なAI導入を進める。本格始動から1年で12人分の費用を削減。AIを活用したロールプレーイングによる人材育成でも成果を上げる。外部企業への支援も含め、業界全体へのAIの普及を見据える。
ロープレで成約率17ポイントアップ
全社員にAI環境
クラスコHDは「すべての業務に、AIを」というグループスローガンを掲げ、全社でAI活用を推進。全社員に有料版の生成AI「Gemini」のアカウントを付与し、業務への活用を前提とした環境整備を行った。無料版の利用に伴う学習データへの転用や情報漏えいといったセキュリティーリスクを回避する。
加えて、毎朝の朝礼時に、社員にAIの活用事例を発表させる取り組みを実施。現場の社員が自らAIを活用し、プログラミング言語であるGoogle Apps Scriptを使用。給与計算やメール送信といった業務を自動化する事例も生まれている。小村典弘社長は「AIはもはやパソコンのように利用するのが当たり前のツール。全員で使うことがポイントになってきている」と話す。こうした全社的な取り組みの結果、年間換算で6860万円、12人分の人件費に相当する業務削減効果が出ているという。
327の実務で利用
同社はさまざまな業務領域でAIの導入を進めている。現場での活用を促したことで、1年で327の業務に使われるようになった。
中でも賃貸仲介部門では「AIロープレ」が新入社員の人材育成の面で顕著な成果を上げている。AIを顧客に見立て、オンラインミーティング形式で商談のロールプレーイングを行うことができる。声のトーンや表情も含めてAIが評価する仕組みだ。従来は店長や先輩社員が担っていた教育業務をAIが代替。「結果として成約率が41.8%から59.1%と17.3ポイント向上し、教育期間も1カ月短縮した」と小村社長は明かす。
若手社員にとっても、AI相手であれば気兼ねなく繰り返し練習できる点が効果につながっているとみる。
そのほかにも、ポータルサイトへの物件情報登録時の確認をAIで自動化。年間308時間の削減につなげた。クレーム対応の録音データを読み込ませて時系列の整理と解決策を提示する「トラブル対応ボット」も効果を上げている。加えて、大規模修繕の提案資料の自動作成など、多岐にわたる業務で生かす。
追客を自動化
今後の注力分野として同社が位置付けるのが、AIエージェントの開発と業務の自動化だ。すでに来店前日の確認メールを自動で送信する仕組みを運用。反復的な業務をAIエージェントに任せる方針だ。
成約に至らなかった顧客に対する追客業務の自動化にも着手。顧客の希望条件と、新たに退去予定となった物件情報を自動でマッチングするAIエージェントを構築した。「業務の忙しさから希望条件に合う物件を探し切れず、成約に至らないケースが課題だった。今後は自動でメールを送信し、AIが継続的に追客していく仕組みをつくりたい」
機会損失の削減とリピーターの獲得につなげる。将来的には反響対応の一次受け付けから追客までをAIエージェントが担う体制の構築も視野に入れている。
社員がAIロープレを行う様子
勉強会で他社支援
同社はグループのクラスココンサルファームを通じて、不動産会社向けのコンサルティングやサービスも提供。現在、不動産会社から同社への問い合わせで最も多いのがAI活用に関するものであり、業界全体でニーズの高まりを感じているという。
不動産業界では複数のシステムが個別に導入されているケースが多く、情報が一元化されていないことがAI活用の障壁となっている。同社はこうした課題に対応するため、会員企業向けのプログラム「PROP AICAMP」を実施。毎月オンラインで勉強会を開催し、同社の成功事例やAIの最新動向を共有。
「Google Workspace」の代理店として各社のシステム基盤の立ち上げ支援や、AI導入に向けた支援も行っていく。
(2026年5月18日7面に掲載)





