違反企業の社名公表拡大も検討
公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会(以下、首都圏公取協:東京都千代田区)は2017年1月から、不動産表示の規約違反で厳重警告・違約金課金の対象になった不動産会社に対して主要ポータルサイトへの広告掲載を禁止すると発表した。
賃貸仲介はポータルサイトからの集客が中心になっており事実上の営業禁止に近い措置となる。
厳罰化により、不動産の表示規約や景品表示法・宅建業法に違反する「おとり広告」の数を減らし消費者保護と不動産仲介ビジネスの質の向上を図る。
掲載禁止となるポータルサイトは、『HOME'S』(運営会社:ネクスト)、『SUUMO』(リクルート住まいカンパニー)、『at home』(アットホーム)、『CHINTAI』(CHINTAI)、マイナビ賃貸(マイナビ)の5サイト(順不同)。
広告の掲載禁止期間は1カ月以上だ。
各ポータルサイトの規約によって多少の幅はあるが期間が大きく変わってくることはないという。
15年度に厳重警告等の対象になったのは49社でそのうち46社がインターネットに関する内容だった。
今年度も10月まででネットに関して31社が対象になっている。
今回の措置の決定に至った背景として、おとり広告数の増加が挙げられる。
首都圏公取協は12年にポータルサイト適正部会を立ち上げた。
おとり広告の取り締まり強化が目的だ。
14年からサイト利用者の指摘等で疑わしい広告の情報共有を始めた。
14年度の違反物件情報は2184件、15年度は3619件と1400件ほど増加している。
そのうち2132件は成約後でも広告の取り下げをしていないなど、物件は存在するが取引の対象にならない広告だった。
違反件数の増加理由はポータルサイト各社による調査や摘発の強化により違反が表に出てきたことも挙げられる。
15年度の違反物件のうち、約6割に当たる2147件が首都圏公取協の担当する関東とその周辺の1都9県についての掲載情報だったこと、消費者庁から不動産のおとり広告への取り締まり強化の要請があったことを受け、今回の決断に至った。
谷正志専務理事は「今後は、悪質な事業者に対する社名公開の拡大も検討したい」と話しており、違反者に対する厳罰化が進む可能性が高い。
問題点もある。
今回の決定が有効なのはあくまで首都圏公取協の担当するエリア内のみ。
公取協は全国に9協議会があり、各エリアでの対応も進める必要があるが、協議会ごとに対応は異なっているようだ。
【ポータルサイト運営会社トップの声】
アットホーム(東京都大田区)鶴森康史社長(55)
適正な表示をしている大多数の不動産会社の利益につながり、業界全体の健全な発展に寄与し、消費者保護の観点から意義深い施策と考えている。
不動産会社と消費者双方にご利用いただくポータルサイトが共同する意味も大きい。
ネクスト(東京都港区)井上高志社長(47)
おとり広告は不動産業界全体の信頼性に関わる問題。
部会構成各社と協調して不正を許さない姿勢を示すことで、信頼感の醸成と健全な市場の発展に寄与するものと考える。
リクルート住まいカンパニー(東京都中央区)野口孝広社長(48)
リクルートグループとして住宅事業を始めた40年前から審査機能の強化に努めてきた。
今回の施策はカスタマーにとって安心安全な住み替えが増え、賃貸業界にとっても健全な取引が増え業界発展に寄与すると考えている。