企業研究vol.104 リーガルスムーズ 川上 明 社長【トップインタビュー】

リーガルスムーズ

インタビュー|2021年04月15日

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 入居者の無断退去や孤独死が発生したときに、賃貸借契約の解除と残置物問題を早期に解決することができる『スムービングサービス』を提供するリーガルスムーズ(東京都中央区)は、3月29日時点で4万328件の契約を有している。家賃債務保証会社への加入を条件に入居者が利用するサービスで、賃貸管理会社が入居者に利用を促す。「明け渡し訴訟をせずに、早期解決ができる革新的なサービスで、賃貸業界に貢献したい」と語る川上明社長を取材した。

残置物問題解決サービス約4万件の実績

無断退去や孤独死発生時に契約解除と所有権放棄を代行

―賃貸業界には、無断退去や孤独死が発生したときの損害を補償する保険商品がありますが、『スムービングサービス』とはどう違うのでしょうか。

 入居者が費用を負担し利用する『スムービングサービス』は、非常事態が発生したときに、入居者に代わって退去に関連する手続きを行います。基本サービスの内容は、賃貸借契約の解約意向、残置物もしくは遺品の所有権放棄、電気やガスなどライフラインの解約意向を関係各社に通知することです。万が一、無断退去や孤独死が起こってもすぐに原状回復が可能になり、家主や管理会社のリスクが軽減するため、入居を受け入れやすくなります。入居者が本サービスを利用するには家賃債務保証会社への加入が必要です。ニッポンインシュア、アーク賃貸保証、プラザ賃貸管理保証など8社の家賃債務保証会社と提携しており、全国延べ6623社の賃貸管理会社が当社のサービスを入居者に案内しています。3月29日時点で契約数は4万328件になりました。家賃債務保証会社と管理会社が外国籍や高齢の入居者に対し本サービスの利用を条件に審査を通したり、属性を問わずに利用を勧めるケースもあります。

スムービングサービス契約数等まとめ

―オプションサービスもありますが、どのような内容ですか。

 オプションでは、基本サービス対応後に三つのサービスを提供します。所有権を放棄した残置物の処分、原状回復工事やハウスクリーニング、遺体の移動手配です。よくある保険商品ではこのような作業にかかった家主の費用を補償しますが、当社の場合は家主から費用をもらわずに作業を行います。全国163社の協力会社が実働し、上限200万円分の作業が可能です。作業にかかる費用は、入居者が支払う『スムービングサービス』の利用料で賄う仕組みになっています。

―費用の補償や立て替えでない点が特長ですね。入居者が支払う利用料はいくらですか。

 月払い、年払い、一括払いの3パターンで異なります。月払いの場合、基本サービスのみで月330円~、オプション付きで月539円~。基本サービスのみの一括払いは9900円~(いずれも税込み)です。提携している家賃債務保証会社とオリジナルのセット商品を企画することもあります。ナップ賃貸保証とは家賃保証とオプション付き『スムービングサービス』を組み込んだパッケージ商品を開発。2016年10月から愛知県宅地建物取引業協会と、17年2月から千葉県宅地建物取引業協会と提携し、両協会の会員向けにパッケージ商品を提供しています。高齢者を含む住宅確保要配慮者が安心して生活できる住居を提供するためには、管理会社や家主のリスクを軽減する仕組みが必要だという協会の方針から、提携に至りました。

明け渡し訴訟の必要なく約1カ月で原状回復完了

―実際にどのくらいの期間で原状回復ができますか。

 孤独死の場合、賃貸借契約が相続されるため、通常は相続人を捜索し、不在確定の判決が必要です。無断退去の残置物撤去については、明け渡し訴訟後に強制執行を経てようやく、処分することが可能になります。どちらも原状回復するまでに6~10カ月はかかるでしょう。当社のサービスを利用している入居者であれば、裁判をする必要はありません。相続人の有無にかかわらず孤独死は発見から約1カ月で、無断退去は3カ月分の家賃滞納確定後から約1カ月で、残置物を撤去し原状回復を完了できます。期間は室内の状況にもよりますが、早さだけでなく、残置物を検品し必要に応じて半年間保管するなど、丁寧な対応を行っています。

―明け渡し訴訟を行わずに解決できるという点では画期的なサービスですが、法律的には問題ないのでしょうか。

 入居者と当社で消費者契約を交わしているため、全く問題ありません。これまで裁判をするしか解決方法がなかったため、当社のサービスに疑念を持つ人たちも実際にいます。しかし私は、裁判という従来手法ではなく新しい解決策を提供したいと思い、当社を立ち上げました。前職の弁護士事務所で多くの明け渡し訴訟に関わり、賃貸借契約の解約や残置物撤去問題を円滑に解決するサービスが必要だと強く感じたのがきっかけです。商品開発においては、コンプライアンスの厳守は当然ながら、孤独死や無断退去の発生率を研究し、試行錯誤を繰り返して完成に至りました。

―契約拡大に向けて今後の方針を教えてください。

 提携する家賃債務保証会社や賃貸管理会社の増加に伴い、契約数も年々増えていますが、20年以降は新型コロナウイルスの影響で外国籍入居者の契約が減少しています。国内に関しては、若年層の自殺も増えていることから、全ての世代の入居者に利用してもらえるよう、家賃債務保証会社や管理会社との提携を拡大したいと考えています。20年6月には埼玉県から居住支援法人指定を受けました。生活弱者の住宅確保をサポートする企業として業界内での認知度向上につなげていきたいです。将来的には、独自の消費者向けサービスの構築とさらなる付加価値商品を提供していきたいと思っています。

休日は野球で〝獅子奮迅〟

 少年時代に白球を追いかけていた川上明社長は現在、三つの草野球チームに所属している。週末はどこかしらのチームで練習や試合に参加し汗を流す。グローブやバット、スパイクには〝獅子奮迅〟の文字が刻まれている。「座右の銘というわけではないが、気に入っている言葉。どんなに厳しい状況でも、あきらめずに工夫を凝らし最後までやり遂げることは自らの信念」と川上社長は語る。今までにないサービスを世に広めるため、川上社長は奮い立つ獅子のように仕事と野球に打ち込んでいる。

グローブの写真

〝獅子奮迅〟の文字が刺しゅうされたグローブ

 

会社概要

社名:リーガルスムーズ
住所:東京都中央区日本橋3-5-12 ニュー八重洲ビル9階
設立:2015年8月
資本金:5000万円
従業員数:13人
事業内容:入居者向けサービス『スムービングサービス』の企画、運営、販売

会社メモ

2015年9月に『スムービングサービス』の特許出願。3社の弁護士事務所と顧問契約を結んでおり、そのうちの一社は賃貸トラブルに強いことぶき法律事務所だ。19年8月末に同サービスの契約件数が3万件を突破している。

社長メモ

川上 明 社長。1975年生まれ。千葉県出身。金融会社で勤務後、法律事務所に転職し多くの明け渡し訴訟に関わる。2013年春から入居者向けサービスの商品研究に着手し、同社設立に至る。18年5月に社長就任。趣味は野球、夏は船とジェットスキーなどアクティブに過ごしている。

(4月12日15面に掲載)

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