コロナ下で変わる地方移住特集①

ふるさと回帰・循環運動推進・支援センター, マチモリ不動産, LIFULL(ライフル)

統計データ|2021年04月18日

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 コロナ下においてテレワークの導入が進むことにより、不動産ビジネスにどのような影響があるのか。通勤の機会がなくなったり、減ったりしたことで、移住のニーズが高まっているかを現場の声から検証。移住で人気のエリアの不動産会社や移住者の受け入れに取り組む会社を取材し、地方の不動産会社の商機を探った。

宿泊施設が田拠点移住やワーケーションで活況

ふるさと回帰支援センター、20年6月以降相談件数3倍に急増

 移住希望者の相談を受け、各自治体の紹介や移住セミナーの開催をしている特定非営利活動法人100万人のふるさと回帰・循環運動推進・支援センター(東京都千代田区)の高橋公理事長は「2020年6月の緊急事態宣言明けに人が動けるようになり、相談者数は緊急事態宣言中の4、5月と比べ3倍になった。コロナ下になって本気度が高い移住希望者が増えたと考えている」と話す。

 同センターは20年度に3万8320件の移住に関する相談を受けていた。

 コロナ下において特徴的だったのは、首都圏から100~150㎞圏内の都道府県への移住相談者が増えたことだ。19年度と比較して茨城県で1.8倍、栃木県で1.6倍、群馬県で1.3倍、神奈川県で1.4倍、山梨県で1.6倍と20年度では相談者数が増加した。

 コロナ禍により在宅勤務になり、職場へのアクセス重視から、同じ家賃であっても「もう一部屋」の余裕を求めて都内から移住したのではと同センターは推測する。

 これは他の都市部にも見られる傾向で、「移住希望地ランキング」にランクインした和歌山県や長野県なども愛知県や大阪府などの都市部からの移住者に人気だという。

 「1年以内の移住」の希望者数は19年度より6.1ポイント増加した33.2%となった。  

 「テレワークが可能になったことを理由に移住する人は数としてはそこまでいない。数パーセントは増えていると思う。地方移住増加の下支えになっている傾向はあるのではないか」と高橋理事長は分析する。

 20年度の「移住希望地ランキング」窓口相談者編の上位は、1位が静岡県、2位は山梨県、3位は長野県、4位は福岡県だった。一方で、都市部周辺の地域も新規にランクインしており、都市周辺にはリモートワークによる移住、その他の地域では現地で就業するパターンが多い。

ふるさと回帰支援センター 高橋公理事長の写真

ふるさと回帰支援センター
東京都千代田区
高橋公理事長(73)

 

 

マチモリ不動産、ゲストハウス連泊増加 テレワークが要因

 マチモリ不動産(静岡県熱海市)では、グループ会社machimori(マチモリ:同)が運営するゲストハウスでの連泊の利用者が「体感で1~2割程度増加した」とmachimoriのまちやど事業部杉山貴信氏は話す。

 machimoriが2015年から運営してきた『guest house MARUYA(ゲストハウスマルヤ)』は、19年までは主に観光目的の宿泊などを理由にした20代後半の1泊2日の宿泊者が中心だった。

 20年11月から、定額制多拠点居住サービスである『HafH(ハフ)』に登録したところ一気に連泊が増加。平均宿泊数が1.1泊から最大で1.5泊21年1月)に増えた。

『guest house MARUYA』の写真

machimoriが運営する『guest house MARUYA』

 従来と異なり、「ワーケーション」を理由に2、3泊する20代後半から40代の利用者が19年度と比べ、体感で1~2割程度増えてきている。また、中には1泊2日であってもワーケーション目的に利用する宿泊客もいるという。杉山氏は「他のゲストハウスと違い、作業のできる広いラウンジがあることで、1泊2日でもワーケーションに利用されているのでは」と推測する。

 マチモリ不動産の三好明代表は「テレワークの影響を感じる。テレワークの導入により、多拠点生活をしたくても今まではできなかった層が流入してきたのが、利用者が増えている要因ではないか」と話す。

 一方、本格的な移住者の動きとしては、「新型コロナウイルスの感染流行で都心を避けて地方へ移住してくるという動きはそれほど多くない」(三好代表)という。

 静岡県はふるさと回帰支援センターが発表した「20年度移住希望地ランキング」で1位、さらに16年から継続してトップ3に入る人気の移住地だ。一方で熱海市の実際の流出数は流入数より多かったというのが20年度の現実だ。

 同社は、転勤などで熱海へ引っ越したいが賃貸住宅がなく困っている20代と空き家は持っているが持て余しているオーナーのマッチングを20年4月から始めている。これまでに8件ほど行ってきた。借主の希望に沿ってリフォームした上で入居する。借りてもらえる見込みがない状況では賃貸市場に出したくないオーナーもあらかじめ入居者が決まっている状態であれば動きやすいからだ。

 ただ、コロナ下で新たに熱海に移住してきたのは50代がほとんどだという。2拠点目としてのセカンドハウスの購入や賃貸などのニーズが中心だ。

 「本来ならば、定年後に検討するセカンドハウスをテレワークになったことで通勤時間が浮き、調査する余裕が生まれ、移住が進んだとみる。テレワーク増加の影響を大きく受けたのは移住よりも多拠点生活やコワーキングスペース。今後も現在ある物件を活用し、多拠点生活をしている人を呼び込む方がよいだろう」と三好代表は語った。

マチモリ不動産 三好明代表の写真

マチモリ不動産
静岡県熱海市
三好明代表(40)

 

 

LIFULL、コロナ下で定額制拠点利用者5倍

 不動産ポータルサイトを運営するLIFULL(ライフル:東京都千代田区)が提供するサテライトオフィス兼宿泊施設の定額制サービスは利用者が急増している。

 2020年度の利用者数は19年度と比べ5倍に増えた。

 同サービス名は『LivingAnywhere Commons(リビングエニウェアコモンズ)』。

『LivingAnywhere Commons会津磐梯』の外観写真

『LivingAnywhere Commons会津磐梯』の外観

 19年からサービスを運用しており、現在直営3拠点、提携11拠点ある。

 元々利用者の7割を女性が占めており、利用者の年齢層も20代から30代が8割を占める。

 その傾向はコロナ下でも変わらなかったものの、「以前はフリーランスの利用者が多かったのが20年度は会社員のテレワーカーが増えた」と地方創生担当の小屋敷圭史氏は語る。

(4月12日10面に掲載)

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