コロナ下でニーズが急増するオンライン接客、導入企業からノウハウを学ぶ 前編

日本エイジェント, ブルーボックス, スタートライングループ, イーアス不動産

企業|2021年07月23日

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LINEでやり取りする画面

 コロナ禍を機に、オンライン接客を本格的に開始した企業は少なくないだろう。オンライン接客は、対面接客で各社が培ってきた接客ノウハウとは違うハードルがある。必要機材を導入したり、専用の窓口を作ったりなど、オンライン接客の体制を整える企業8社に取材し、オンラインならではの課題や、その課題解決について各社の取り組みを聞いた。

オンライン店舗に月50件以上の"来店"

 コロナ下で非接触での接客が求められるようになり、今繁忙期においてもオンライン面談、オンライン内見を活用する案件が増えた。

オンライン接客を導入する企業は大抵の場合、対面かオンラインかを客側に選んでもらうケースが多く、特にコロナ禍前から遠方客に対応するためオンライン接客を導入していた会社の多くは「コロナ禍を経て件数は増加した」と話し、顧客からのニーズの高まりを感じている。

 内見に関してはスタッフが現地に行き、ビデオ通話で顧客に見えるように物件を映す手法と、入居希望者自身が現地に行き、リモートでスタッフがビデオ通話越しに説明を行うケースなど、方法はさまざまだ。

 ビデオ通話の画像の粗さや、営業社員が同行しないことで内見時の疑問点などをすぐに解消できないなどの問題が生じやすい。そのため内見時の満足度が得られず、成約率が一般内見時よりも低くなる傾向にあるという。

日本エイジェント、専門部署立ち上げ 機材導入で課題解決

 オンライン面談とオンライン内見それぞれで抱えている課題を解決した企業がある。管理戸数約1万4000戸の日本エイジェント(愛媛県松山市)だ。同社ではオンライン接客の専門部署を立ち上げたり、必要機材を導入することで、非対面での対応上で生じる問題に対処している。

 同社ではオンライン面談・オンライン内見に対応する専門部署『サテライトチーム』を2020年4月に設立した。所属するのは4人の若手社員。オンライン対応を希望する個人客に対し、同部署で接客から内見、契約の取り交わしまでを行う。

 客とのやり取りは19年に自社開発した顧客管理システム『スタッフレスプラス』で行う。顧客管理機能、チャット機能、電話、追客機能、自社サイトでの物件情報の閲覧回数をカウントする機能を備える。

 同システム内にはLINEを組み込んでおり、チャットや電話はLINEを通して行う。運営側である同社には顧客管理などを備えたシステムだが、客にはLINE上でのやり取りのみとして映る。オンライン面談は別途Zoomで行っている。

 経営企画推進室の東川大輔マネージャーは「オンライン上ではリアルの対面より雑談のしにくさがある」と話す。

 そのため、同社では『スタッフレスプラス』を通して、面談前にアンケートを送付する。希望の間取りやエリアなどの条件の他、趣味についての設問を設けているのが特徴だ。あらかじめ面談時に客の趣味などを把握しておくことで雑談のきっかけとしている。

 また、オンライン内見における課題は「成約率が低いこと」と「手振れで内見画像が乱れること」だ。同社ではオンライン内見を2パターンで対応している。内見希望者が一人で現地に赴き、物件を見る内見(セルフ内見)と、営業が現地に赴き、ビデオ通話で客に物件内を見せるオンライン内見だ。

 セルフ内見では営業社員が同行しないため、客が抱えた疑問点などをその場で解消できなかったことから成約率が3割と、一般内見と比べ2割程度低かった。

 そこで客の疑問にすぐ回答できるよう、同社では21年4月より内見予定の物件にタブレットをあらかじめ設置するようにした。タブレットが『サテライトチーム』とつながった状態で内見してもらうため、疑問があればその場で営業社員に確認できる。

 またオンライン内見では営業社員がスマートフォンのビデオ通話で部屋を客へ見せるが、その際に手振れがひどく、部屋の状況が伝わりにくいという課題があった。手振れを解消するため、同社では「ジンバル」という機材を導入した。「ジンバル」は手振れ防止専用の機材で、ビデオ通話内でぶれた映像をその場で自動でスローに編集する。これによりビデオ通話相手に映像を奇麗に見せることができる。

 それぞれのオンライン内見の効果はあり、成約率が1割向上し4割となった。

 

ブルーボックス、ビデオ通話で案内 巻き尺でサイズ伝達

 管理戸数1万1300戸のブルーボックス(愛知県稲沢市)では、面談や内見ともにオンラインを導入している。業務効率を高めながら、試行錯誤を繰り返すことでオンライン接客を強化してきた。

 同社は不動産テックの導入を試み、17年にVR内見を開始。しかしVRは来店しなければ見ることができない仕様で、「来店するなら現地で内見したい」という声が多かったことから件数は全7店舗で月10件にも満たないほど不評だった。

 コロナ下による外出自粛をきっかけに、20年12月にオンラインサービスを一新。営業社員が現地からビデオ通話で接客するオンライン内見へ変更したほか、オンライン面談も取り入れた。

 オンライン接客を導入したことによる効果は業務効率の改善だ。「オンライン面談を予約する客はある程度入居希望の物件が決まっていることが多く、余分なメールのやりとりをしなくてよい傾向がある」と篠本秀一統括部長は話す。オンライン面談では客と打ち解けるには対面時と比べ時間がかかるものの、限られた時間の中で物件紹介に時間が割けるという点ではプラスに捉えている。

 また、篠本統括部長は「オンライン・対面合計の接客数は20年比105%とほぼ横ばいで、実際にオンライン接客導入による成果とは言い切れない」とした上で、「対面接客のみであれば取りこぼしていた客も、オンライン接客で対応できたことにより掴むことができたのでは」と話す。

 同社がオンライン接客時に工夫しているのは、「対面時より確認を多く取ること」と「内見にはメジャーを持っていくこと」だ。

 オンライン面談では客側のネット環境によってはビデオ通話の画質が悪く、表情が乏しく見え、愛想が悪いように映ってしまう場合がある。声を出して確認する頻度を増やすことで、丁寧に対応する印象を与えることができる。

 またオンライン内見時には、ビデオ越しでは伝わりにくい広さなどを、分かりやすく数値で伝えるためメジャーを各営業社員が持参。これは入居後のトラブルを防ぐ目的もある。

 今後はオンラインならではの工夫できるPRをしていきたいという。例えば、面談時には背景にQRコードを張り付け、LINEの友だち登録を促すなどを検討している。

 

スタートライングループ、HPから日時予約 ウェブ上で面談実施

 東京都中央区を中心に仲介店舗を展開するスタートライングループ(東京都中央区)では、緊急事態宣言を受けてオンラインでの案内対応を強化し、コロナ下でも仲介件数が低迷せず、成約率が増加した。

 同社ではオンラインで面談と内見に対応する。2020年5月より『オンライン店舗』を開設し現在全10店舗で完全予約制のもと運用。全店舗合計で月50~60件の利用があるという。

 『オンライン店舗』は客になじみやすいよう「店舗」という形をとっているが、実態はオンライン面談の専用窓口だ。客側はHP上に設置されている『オンライン店舗』のページで予約を取り、Zoomなどのビデオ通話ツールを使って接客を受ける。同社側では予約が入り次第、URLを発行し客へ送付。予約日時にお互いがURLをクリックするとオンライン店舗に入り、テレビ会議などで面談を行う形になる。

 同サービスではZoomのほか、LINE、FaceTime、GoogleMeet、Chatwork(チャットワーク)の六つのツールに対応できるよう体制を整えている。

 オンライン内見に関しては、営業社員が現地へ赴く形をとっている。スマートフォンなどの端末から客とビデオ通話でつなぎ物件まで向かう。ツールはオンライン面談と同様のものを使用しており、件数は月100件ほど。

 オンライン内見では物件の共用部や専有部のほか、最寄り駅から物件までの道程も見せるようにしているという。そのためビデオ通話は最寄り駅からつなぐ。営業社員はミュートにすることで街中の雑音が入らないよう配慮する。

 オンラインでの案内を強化することで、コロナ下でも接客対応数は例年と変わらず、成約件数は19年比10%増だったという。

 一方で課題は、オンライン面談では営業しにくい雰囲気になる場合があることだ。客の中には接客時にカメラをオフにしてしまい表情が見られず、セミナーを受けているかのように返事をほとんどしない場合があるという。話が届いているのか分からず、営業しにくいと感じる社員もいるようだ。

 「沈黙の時間が流れないよう、対面時の接客よりも紹介する物件資料を増やすなど、入念に準備することで備えている」(城田章常務)

 

イーアス不動産、LINE活用し1日100件の反響

 不動産の売買仲介をメーンに行うイーアス不動産(東京都文京区)では、完全非対面で賃貸接客が完結できるサービス『AWANAI(アワナイ)賃貸』を2020年1月から展開している。開始当初から大きな反響があり、非対面での契約件数は月平均20~40件。

 『AWANAI賃貸』の中身はLINEを活用したコミュニケーションだ。HP上から友だち登録をしてもらう。物件紹介、初期費用計算、入居審査、賃貸借契約の取り交わしがLINE上ででき、IT重説のみZoom上で行うが、ZoomのURL送付はLINEで行う。

LINE上での客とのやりとりイメージ図

LINE上での客とのやりとりイメージ図

 開始当初は一日あたり100件ほどの反響があり、従業員の手が回らないほどだったという。現在は広告費を抑えることで一日20件の問い合わせまでに抑制できている。

 課題は、返信率の低さだ。友達だち追加後に同社からメッセージを送っても返信がないことが9割で、また返信があったとしてもメッセージが返ってくるのが遅く、やりとりに時間がかかる。

 友だち登録から成約までをスピーディーに進めるため、同社では少ないやりとりで接客が完結するよう、年齢層や性別ごとに、紹介する物件を絞って提案している。例えば、女性客であればオートロック付き物件を勧めるなどだ。提案する物件をニーズに合わせて絞りこみ成約率の向上を目指す。

 岡田裕之社長は「何を提案するべきかの判断は素人では難しい。的確な物件提案のできる人材の育成が足元の課題」と語った。

イーアス不動産 岡田裕之社長の写真

イーアス不動産
東京都文京区
岡田裕之社長(47)

 

 

※本紙面では、オンラインでヒアリングや物件情報の紹介などを行うことを「オンライン面談」とし、VRの活用やス タッフが現地に行きテレビ電話などで内見を行うことを「オンライン内見」とします。また、両者を総称して「オンライン接客」とします。

(7月19日4面・5面に掲載)

関連記事▶【コロナ下でニーズが急増するオンライン接客、導入企業からノウハウを学ぶ[前編][後編]】


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