小菅不動産(神奈川県大和市)は、神奈川県大和市に四つの店舗を展開し、5800戸を管理する。小菅貴春社長は公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(東京都千代田区)が新設する賃貸住宅メンテナンス主任者認定制度の策定に際し、テキスト編さんの責任者として尽力した。賃貸管理会社が建物メンテナンスをどのようにして事業化するべきか、話を聞いた。
専任者が大規模修繕提案
―バリューアップ工事の提案に際して、気を付けていることは。
「工事にいくらかけて、いくら家賃をアップするのか」の見立てを、きちんと組み立ててオーナーに伝えることだ。築年数が浅い物件では、通常の原状回復以上の投資が成り立ちにくい。長く入居した人の後であれば、複数のプランを提案して選択してもらう。
―大規模修繕の提案は、どのように行っているのか。
専任者を置くことにした。各店長から情報を吸い上げ、その内容を基に修繕の提案をしている。例えば、物件案内でスタッフが損傷に気が付いたら、大規模修繕スタッフに情報を共有する。それが契約につながっている。
―これまで賃貸物件において、大規模修繕の提案はそれほど行われてこなかったように感じるが、実態はどうか。
周りを見ると賃貸住宅よりも一般の戸建て住宅を対象にするリフォーム会社が、営業提案していることも多いと思う。賃貸住宅に適した提案は、管理会社が一番やりやすい立場にいるはずだ。当社の場合は、日常清掃、定期清掃、消防設備点検、貯水槽清掃、排水管清掃など、総合的に受託したいと考えている。2階建てアパートだと、定期点検を希望するオーナーが少ないので、3階建て以上の中規模物件を抽出して、提案する準備をしている。
―大規模修繕の提案をすることが、オーナーにとってはどんなメリットがあるか。
仲介業も行う当社のような賃貸不動産会社の場合、入居者にとって良い居室でなければ仲介しにくい。良い居室の条件として、建物の健全性が担保されていることは大前提となる。そして、健全性を保つためには、定期業務、日常清掃により、常に良い環境を維持することが必要だ。だが、オーナーにその提案をすると、出費の話として認識されやすい。収益改善につながることを理解してもらいながら、提案するのが重要だと思う。
―賃貸管理業務の中心に、建物管理が入るイメージか。
従来の賃貸管理は、家賃管理がメインだったが、そこにおいても重要なのは建物の健全性になると思う。そのためには、知識や社内の仕組みを整える必要があり、点検業務まで含めて取り組むべきだろう。建物管理業務は現場ありきだ。DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めても、現場対応はなくならない。現場がなくならない分野においては、地域密着の会社は強いと思う。
(2023年9月4日17面に掲載)