今回紹介するM&A案件は、大手インフラ企業が賃貸管理会社を買収した事例です。
対象企業は、東京都を中心に賃貸住宅の管理・運営に加えて、オーナー層向けのリノベーションなどの企画提案を行っており、特に女性向けやシェアハウスといった特徴ある企画に強みを持っていました。
売り手となった対象企業の親会社は、同じく不動産事業を営む法人で、主にオフィス賃貸仲介を行っています。対象企業は、レジデンス分野への事業領域を拡大する一環として設立され、親会社にとって社内ベンチャーのように位置付けられていました。
さまざまな情報やニーズをグループ内で共有することで、オフィスとレジデンスのどちらにも対応できる体制を整えていました。
しかし、成熟した競争の激しい不動産業界においては、グループ会社の連携による目立った成果を上げることは難しい状況でした。
親会社も対象企業も、単体の業績に大きな問題はありませんでしたが、このような背景もあり、親会社は事業の「選択と集中」を進める一環として対象企業の売却を検討することになったのです。
独自性、潜在力を生かすマッチング
対象企業は設立以来、自社で不動産の取得は行わず、フィービジネスに特化していたため、大きな資産を持っていませんでした。
一方で、管理や企画提案などの底堅いリスクが低い事業展開により、無借金で安定した業績を維持しており、大幅な利益は上げづらい収益構造で、内部留保も限られていました。