マチモリ不動産(静岡県熱海市)は、熱海市で空き家の再生を主業として取り組んできた。ここからさらに進み、中心部から少し離れたエリアのテナントビルの利活用を進め、エリアの活性化に挑戦する。
大工誘致で人手不足解消
リノベ前に成約 売上高1億5000万円
マチモリ不動産は再生前にリーシングを行い、入居者の希望を取り入れた再生を行うことで、空き家の再生を推進。年間約24棟を改修する。そのまま管理の受託もしており、7月24日時点で約100戸を管理する。
商圏とするのは熱海市の中心部である銀座町だ。築50〜60年でのRC造で、空室のまま放置されているエレベーターのない物件を中心に再生。熱海市への移住希望者とのマッチングを行っている。
25年8月期の売上高は1億5000万円。そのうち8000万円が空き家再生事業によるものだ。
三好明社長は「再生前に成約すれば、オーナーは賃料収入が確約された状態で物件のリノベに投資ができる。また、入居希望者も自身の希望がリノベに反映されるため、好みの物件に確実に住むことができる」と話す。
リノベ費用をオーナーが捻出できない場合は、マチモリ不動産もしくは同社の不動産を通じてまちづくりを行う活動に賛同するサラリーマン投資家が資金を提供。同社が借り上げることで改修にかかった費用を回収している。
借り上げ期間は7年間を目安とし、5年で工事費用を回収した後、残り2年間の賃料がマチモリ不動産や投資家の収益となる。その後はオーナーに返却する。リノベにかかる費用はワンルームの場合は300万円程度、2DKなら400万〜500万円程度だ。
賃料はワンルームで5万5000〜6万5000円、2DKで7万〜10万円と、相場より1万円ほど高く設定。表面利回りは20%を目安とする。
さらに2022年からはリーシング前に同社でリノベする事例も増加。物件の供給が需要に対して足りていない市況もあり、25年8月期に再生した物件のうち9割を占めるまでになっている。
「これまでの再生を通じて、入居者のニーズが見えてきたので、リーシング前にリノベすることが増えてきた。移住希望者に対して物件の数が圧倒的に足りていないので、すぐに入居申し込みが入る」と三好社長は話す。
同社で戸建てを店舗に再生した物件
テナント賃料10倍 商圏を広げ対応
マチモリ不動産が現在進めるのが、商圏の拡大とテナント再生だ。
「熱海市が人気の観光地になるにつれ、全国規模のフランチャイズチェーン(FC)店が増えている。どの街にもあるような店舗が多くなり、熱海市に観光客が足を運ぶ意味が薄れるのではないかと危惧している。熱海市ならではのテナントが必要だと思う」
熱海市の観光宿泊者は24年で300万人超と新型コロナウイルス禍以前の水準にまで回復。これからも増加が見込まれる状況にある。その結果、FCの進出も加速。これに伴い地価も高騰し、同社が再生してきた銀座町のテナント賃料は10年以前と比べて1坪あたり3万〜4万円と10倍になっている。
その結果、同社が従来再生してきた銀座町の賃貸住宅も軒並み賃料が高騰。熱海市の平均賃料が6万〜7万円であるのに対して2000〜3000円高くなっているという。一方で少しでも中心地から離れると家賃は下がる傾向にある。
そこで、同社は商圏を拡大。銀座町の隣の湯河原町などの電動自転車やバスで10〜15分の圏内にまでエリアを広げている。加えて、従来力を入れてこなかった管理外物件の賃貸仲介を21年より開始。年間約50件を仲介する。
併せて、テナントビルを再生することで、新たに熱海市で事業を行いたい個人事業者を誘致。熱海市の中心部以外の価値を高め、居住地としての魅力を上げることに取り組む。
24年には銀座町に隣接する咲見町の戸建て空き家を古着屋兼カフェとして再生。神奈川県からの移住者が運営している。熱海市には古着や若い人向けの衣料品店がなかったため、観光客からだけでなく、地元民からも好評だという。カフェがあることで、人々の交流の場にもなった。
「今後はビルを1棟丸ごとテナントビルとして再生することに力を入れ、商圏拡大との2軸で熱海市の可能性を引き出していきたい」と三好社長は話す。
建材費が高騰 DIYで対策
同社が現在抱える課題が、改修に必要となる建材費の高騰と人手不足だ。
これらの対策として、同社は大きく二つの取り組みを行っている。
まず一つ目はDIYだ。事業者に依頼せずともできる、物件の片付けや部分的な解体など専門性の低い作業は自社社員で実施している。さらには豆腐屋や干物屋に勤務するなど、午前中で仕事が終わる人にも解体や片付けを依頼。これらの取り組みの結果、人材確保と同時に工事事業者への発注を抑制。建材費の高騰に対応しているという。今後は一般の人向けにDIYのワークショップも開催する予定だ。
二つ目は施工を行える人材の獲得だ。熱海市に移住して同社の仕事に協力してくれる大工に対しては、空き家1戸を7年間無償で貸し出している。大工は自身の居住用に使うほか、転貸することで賃料収入を得ることも可能だ。
貸し出しているのは、同社が10年間無料で借り上げた築40年鉄骨造2階建ての空き家。この取り組みで大工2人の確保に成功したという。
「年内には一般建設業の許可を取得する予定。今までできなかった500万円以上のリノベにも取り掛かかることができるため、より大規模な物件再生にも力を入れてきたい」と三好社長は意気込む。
今後は中期滞在や年に何回も熱海市を訪問するリピーターを対象にした物件にも取り組む予定だ。その一環として、中古物件をリノベして、風呂がなく銭湯とコワーキングスペースが付いた物件をつくるプロジェクトを進行している。
マチモリ不動産
静岡県熱海市
三好 明 社長
(2025年10月20日28面に掲載)





