空き家問題の解決を事業化する賃貸管理会社が出てきている。管理や仲介のノウハウを生かし、ポイントを抑えた再生を企画。コストを抑えて戸建て賃貸としてリーシングするケースもある。
年2億円売り上げる事業者も
1割は自社で運営
約1400戸を管理するフジハウジング(埼玉県久喜市)には空き家の相談が年間約100件寄せられ、買い取り再販を中心に空き家事業で年間約2億円を売り上げる。
空き家対策に力を入れ始めたのは2015年から。築30~50年の木造戸建てに関する売却や賃貸の相談が多い。
相談から実際の案件まで進むのは、全体の4割の約40件。そのうち約25件は売買仲介につながる。約15件は買い取ったうえで再販するか、リフォーム後に賃貸住宅として保有している。建物を解体して、土地のみを売却したり、オーナーが賃貸住宅として利活用したりする事例もあるという。
自社保有するのはリフォーム後に表面利回りが9%以上見込める物件で、案件のうち1割程度を占める。25年7月24日時点で21戸を保有する。
同社が賃貸住宅として再生する際にポイントとするのは、広い駐車場の確保だ。庭の植栽を撤去し、1台しかなかった駐車スペースを3台分に拡張することで、駅から遠い物件であってもリーシングしやすくなるという。樹木の撤去費用は30万円程度。
藤田田社長は「空き家再生のノウハウが、自社保有物件を通じて蓄積されてきた。不動産会社のイメージがあるため、空き家のリフォーム請け負いにつながっていない。当社の持つ知見で、より資産価値を上げるリフォームができることを訴求していきたい」と話す。
相続支援で反響
約2800戸を管理する絹川商事(石川県野々市市)は、相続支援の一環で空き家対策を始め、戸建て空き家を年15件取り扱う。24年12月期の空き家事業の売上高は、売買手数料と賃貸管理手数料を合わせて約1000万円だ。
相続支援は18年より開始した。三好不動産(福岡市)の関連会社である福岡相続サポートセンター(同)が運営する「全国相続サポートセンター」に加盟。さらにはラジオ番組にも出演し、地域での認知度を高める。番組では絹川忠宏専務が、親族間で争わないための相続対策についてアドバイスを行っている。
これらの窓口に空き家を含む相続の相談は年間約20件持ち込まれる。これに対して、売買仲介や買い取り再販を行うほか、賃貸住宅としての活用を提案し、管理につなげる。取引に進んだ案件のうち、6割で売買仲介し、4割は賃貸住宅として利活用する。24年度は6戸で賃貸管理を受託した。
築30年超の物件がボリュームゾーンで、賃貸住宅にする場合は、水回りのリフォームを必須としている。費用は平均約150万円。約2年での回収を目安とする。平均賃料は6万円。募集開始後約3カ月で満室となる。入居率は約90%。
絹川善隆社長は「空き家は犯罪を誘発する可能性があるほか、老朽化すれば倒壊する恐れもある。空き家対策を進めることで、人やまちに安心・安全な暮らしを届けたい」とコメントした。
リノベ前に募集
約100戸を管理するマチモリ不動産(静岡県熱海市)は長期間放置されているリゾートマンションなどをリノベーションし、賃貸住宅として貸し出している。年間24件ほどを再生し、売上高は約8000万円。そのうち5割がリフォーム、4割が仲介手数料、1割が管理手数料だ。
マチモリ不動産が入居者の希望を取り入れて再生した物件
同社が商圏とする熱海市の中心部である銀座町では、観光業界の就業者による賃貸需要があるものの、賃貸住宅が不足しているという課題を抱える。一方で地域には、築50~60年で、かつエレベーターのないRC造の物件の8~9割が空室のまま放置されている。
そこでこれらを賃貸住宅として再生することで、増加する賃貸需要に対応する取り組みを20年より行っている。空き家は町内会や商店街、飲食店などの知人から紹介してもらう。
同社の空き家再生の特徴は、リノベ前に入居者とオーナーとのマッチングを行い、入居者の希望を取り入れたリノベを実施している点にある。オーナーがリノベ費用を捻出できない場合は、同社もしくは投資家が資金を提供。同社が借り上げることで改修にかかった費用を回収している。
借り上げ期間は7年間を目安とし、5年で工事費用を回収した後、2年後にオーナーに返却する。リノベにかかる費用はワンルームの場合は300万円程度、2DKなら400万~500万円程度だ。賃料はワンルームで5万5000~6万5000円、2DKで7万~10万円と、相場より1万円ほど高く設定。表面利回りは20%を目安とする。
三好明社長は「建築費の高騰で、物件再生コストも上がり、対策に苦心している。安価な資材や大工の確保に取り組んでいる」と話す。
(野中)
(2025年8月25日1面に掲載)





