地場産業として展開する賃貸管理会社が多い中、「地域の価値を上げる」をテーマに活動しているのがエヌアセット(神奈川県川崎市)だ。近年は地元のオーナーとの共同出資会社で築年数の古い建物を再生してシェアオフィス事業を行ったり、保育園事業もスタートした。今回は同社の宮川恒雄社長が目指す賃貸管理会社の新しいカタチについて語ってもらった。
住みたい、住み続けたいと思わせるための「職」提供
亀岡 以前も対談にこられましたね。御社は管理会社でしたね。今はどのくらい賃貸管理されているのですか。
宮川 3月末で3626戸です。6年前に対談にお呼びいただいたときに比べ倍になりました。
亀岡 ひと昔前であれば、その数字でも「どんどん伸ばしていってください」と言っていました。しかし、今100万戸管理する会社が出てきています。その中で、どのように差別化を図っていくつもりですか。
宮川 当社がある川崎市高津区の価値を上げるために新規事業も含めて活動しています。
亀岡 どのような新規事業を展開しているのですか。
宮川 昨年は当社の管理物件のオーナー様が所有している10年ほど空き家になっていた築90年の元診療所兼住居を、共同事務所に再生し、運営しています。
亀岡 共同事務所とは具体的にどのようなものですか。
宮川 複数事業者が共同で使う事務所「コワーキングスペース」とレンタルオフィス、レンタルスペースの複合施設を運営しています。コワーキングスペースは個人事業主やフリーランスの方の会員が増えており、オープンして4カ月ですが、契約者が29名います。
亀岡 そんな事務所のニーズが今増えているのですか。なぜ、その事業を御社で始めようと思ったのですか。
宮川 地域の価値を上げることが、本業である管理・仲介に直結するからです。この地域に住みたい人を増やし、実際に住んでもらい、長く住み続けてもらうための方法の一つとして「職」があると思います。独立した際に家の近くに良質で多様な働き方に対応できるオフィスがあることは重要だと思い、今回築年数が古いけれど魅力的な建物の管理相談を受けたときに提案したのです。ちなみにレンタルスペースは2部屋ありますが、3月は月61組の利用がありました。
亀岡 なるほど、ずいぶんニーズがあるんですね。
株式会社エヌアセット
宮川 恒雄 社長
1971年京都生まれ。大阪育ち。神戸大学卒業後、伊藤忠商事に就職。不動産部門約5年間従事。99年不動産会社ノエルに転職。2005年にジャスダック、東証二部への上場を貢献。09年にMBOにてエヌアセットの代表取締役に就任。現在海外法人を含む6社のグループ会社がある。
- 株式会社エヌアセット
- 本社所在地 : 神奈川県川崎市高津区久本1-1-3
- 設立 : 2009年9月1日 社員数 : 69人(グループ81人)人 資本金 : 1750万円(グループ8420万円)円
- 事業内容 : 賃貸仲介、サブリース業務、売買仲介業務、賃貸住宅および駐車場の管理業務、保有資産の有効活用コンサルティング業務等
経済評論家 亀岡 大郎 氏
大正15年京城生まれ。新大阪新聞経済部長を経て、経済評論家となる。文藝春秋、サンデー毎日など一流紙で、経済・財界問題を中心に、精力的な活動を続ける一方で「自動車戦争」「ゲリラ商法」「IBMの人事管理」などベストセラー多数。