当記事は賃貸住宅フェア2025in東京で講演したセミナーを書き起こしたものです。
アットホームラボ
磐前 淳子執行役員
データで見る入居者ニーズ
進む都心回帰 家賃、上昇傾向
ご存じの通り、いま不動産にかかるコストは賃貸、売買にかかわらず上昇しているが、その度合いがさらに高まっていると感じる。
2020年ごろの景況感調査によると、新型コロナウイルス禍の影響で、業況は賃貸・売買を問わず、調査開始以来最低となった。
その後、コロナが5類に移行した23年ごろから、いわゆる都心回帰が進み、賃貸の業況は改善している。直近でもコロナ前の水準以上を維持しており、1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)の不動産事業者からは「当初の予算より高くなっても成約する人が増えた」との声があった。
募集家賃はマンション、アパートを問わず全国的に上昇しており、特に1都3県ではその傾向が強い。
こういったデータやアンケートの結果を踏まえ、消費者ニーズと空室対策について考えたい。
会場には、178人の聴講者が集った
新社会人が重視 生活利便性と安全
まず、現在需要が急激に高まっている単身者向け賃貸において、特に新社会人が住まい探しで重視している条件や設備について紹介する。
この層が重視した条件は、「通勤通学に便利なこと」「治安が良い」「最寄り駅から近い」「間取りや広さ」などが上位となった。立地など生活のしやすさに直結したニーズは、景気やトレンドが変化しても価値が下がりにくい。
一方で、妥協点に目を向けると、「眺望」「方角」「外観のデザイン」が挙がっており、建物そのもののスペックについては妥協されやすいことがわかる。このことから、どんな物件に住むかより、日々の便利さや安心して暮らせることが重視されると読み取れる。築年数がある程度経過していても、立地や生活動線、安全性などの基本条件を満たしていれば十分な強みになるはずだ。
続いて、重視した設備は「独立したバス・トイレ」「独立した洗面台」「モニター付きインターホン」「オートロック」といった、日常生活の快適性や防犯性に直結するポイントが挙がった。一方で、妥協点は「追いだき機能付きバス」「ロフト」「ウオークインクローゼット」などのプラスアルファの設備。あれば便利だが、必須ではないと受け止められているようだ。
近年は、毎日風呂に入らない「風呂キャンセル界隈」や自宅でご飯をつくらない「自炊キャンセル界隈」といった話がSNSで話題になっており、ライフスタイルに応じて設備の優先順位が変わる時代になっている。設備が充実しているから入居者が決まるのではなく、どういった人に住んでもらいたいかを明確にして、そのニーズに合った設備を選ぶことが競争に勝つ物件の条件になっていくのかもしれない。
住人属性を確認 トラブルに警戒
もう一つ知ってもらいたいこととして、入居検討中の希望者から賃貸物件の管理状況についてよく聞かれる質問がある。圧倒的に多かったのが「ほかの入居者の情報」で、どのような属性の人が住んでいるか、マナーは守られているのか、という点だった。次いで「共有スペースの管理状況」。これらは非常に納得できる結果で、コロナ禍のピークは過ぎたが、それでも在宅時間は以前よりも増えた。その結果、入居者同士で騒音やごみ出しのマナーに関するトラブルが増えている。ささいなことでも問題になり得るということで、住人の属性などを気にする人が多いようだ。
こういった不満が募ると、退去による稼働率の低下、ひいては物件の価値低下につながってしまう。新たな入居者を確保するだけでなく、入居中の住人が心地よく住めているか、管理状況の確認なども重要なポイントだ。いま一度、客観的に物件の状態をチェックしてみてほしいと思う。
いま住まいを探している消費者は、賃料や価格を比較しつつ、自身のライフスタイルと照らし合わせ、これまで以上に厳しく検討している人が多い。不動産事業者は、消費者に無理のない選択肢を一緒に探していける関係づくりをしてもらいたいと願っている。
(2026年1月19日18面に掲載)




