新卒の採用戦略においては、入社後の高い定着率につながる施策も重要だ。2~3面では、入社後のミスマッチを防ぐための選考フローや内定者フォローの取り組みを取り上げる。
情報の発信・交換は「個別対応」主流か
山一地所、5年間離職ゼロ入社前に実務体験
宮城県仙台市を中心に1万4621戸を管理する山一地所では、2026年度の新卒社員として前年比2人増の5人を採用した。同社は直近3〜5年間の新卒離職率が0%だ。
定着の背景には、選考から入社までに実務や社風に触れる機会を多く設け、入社後のイメージのギャップを最小限にする仕組みがある。
同社は内定承諾者を対象に、毎年11月〜3月の間、週1〜2回程度の頻度でアルバイトの機会を与える。電話対応や店内・社用車の清掃を通じて実務に触れる機会を設け、入社後のイメージを醸成できるようにする。
選考フローは、夏季・冬季に行うインターンから始まり、24年に竣工した新社屋見学を兼ねた会社説明会の実施、3回の面接と適性検査を経て内定を出す。例年、会社説明会には30〜40人の参加がある。26年度は約25人が選考に進み、9人に内定を出し、5人が入社した。
入社前のフォローを重視する一方で、課題は新卒社員の成長スピードが遅い点だという。
数年前までは、1年程度で独り立ちできていたが、現在は自立までに2年ほどかかる傾向にある。渡部洋平社長はその理由を「不動産業界の法改正に伴う、順守事項の増加や業務の複雑化、学生のストレス耐性の低下が挙げられるのではないか」とコメントした。
これに対応するため、同社では入社後2か月間の社内・外部研修を設けて教育体制を厚くする。配属後も1人に対し先輩社員が教育を担当する「エルダー制」を導入している。新卒社員は7月の正式配属後、先輩社員の接客や契約に同席しながら徐々に業務を習得していく。
今後も新卒採用を継続し、1年に3〜5人の採用を目標とする。
香陵住販、現場のリアル伝える「難しさ」も提示
茨城県を中心に2万4481戸を管理する香陵住販には、前年度と同じ6人が入社。27年の採用目標は10人とする 。 県内でドミナント展開を加速するため、事業拡大に伴う次世代のマネジメント人材の早期育成を最重要課題に据える。
求める人物像は、企業理念の「三方良し(お客様・従業員・地域)」を理解し、自ら考え誠実に行動できる自律型の人材だ 。既存の枠組みに捉われず、蓄積した知識を武器にオーナーの収支改善や地域課題の解決に挑戦できる人材を求めている。 採用活動では、上場企業としての安定した収益基盤と、成長環境の両立を学生に訴求してきたという 。健康経営や女性活躍、子育て支援など、充実した就業環境もアピール材料だ。
選考プロセスでは、入社後のミスマッチを最小限に抑える相互理解を最重視する 。会社説明会での詳細な業務スケジュールの公開に加え、選考過程で現場体験の機会を提供。 仕事の醍醐味(だいごみ)だけでなく、業務で感じる責任感や難しさも正しく伝えるように努めている という。
入社式で金子哲広社長は「 不動産業はお客様の人生の新しい一歩を支える誇り高い仕事 。上場企業という安定した基盤に安住せず、変化を楽しむ柔軟さを持ってほしい 。新しい力が企業理念を達成するための大きな原動力になると確信している」と祝辞を述べた。





