日本財託、管理戸数2万7000戸突破【成長企業インタビュー】

日本財託,日本財託管理サービス,クラスココンサルファーム

インタビュー|2023年05月15日

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 グループで中古区分マンションの販売と賃貸管理を手がける日本財託(東京都新宿区)は、管理事業の強化を図りつつ事業の多角化を進める。管理戸数は2万7000戸を突破した。社内体制を整備したことが奏功し、人材も定着。約300人を抱えるグループとなった。これまでの成長のカギと、今後の戦略について、重吉勉社長に話を聞いた。

事業多角化戦略を推進

年1600戸伸長 入居率は99%超

 重吉社長は「当社には、ノルマも中期経営計画もない。重要なのは入居率とホスピタリティーだ。数字は後からついてくる」と語る。

会社データ

 同社は東京23区を中心とした中古ワンルームマンションの販売と賃貸管理を主軸に成長してきた。2022年9月期のグループ連結売上高は283億9487万円。連結営業利益は18億357万円。22年9月期の売上高に対する事業別割合は、投資用不動産販売事業が85%、賃貸管理事業が15%となっている。

管理戸数・入居率の推移グラフ

 管理戸数は23年3月末時点で2万7067戸。管理戸数は18年に2万戸を突破し、年間1600〜1700戸ほどの純増を続けている。

 同社の成長の基盤は賃貸管理にある。1年間の新規受託戸数約2800戸のうち、自社で販売していない物件の管理受託も年間の獲得数の半数超を占める。

 販売物件以外でも管理受託を多く獲得できる理由は、高い入居率にある。新型コロナウイルス禍により落ち込んだ時期でも、入居率は98%。23年4月末時点では99.37%を誇る。

 管理会社として入居率にこだわる姿勢を貫く。そのために、仲介会社との関係性を重視してきた。例えば、独自のポイント会員制度を設け、リーシングをした仲介会社の営業社員に対しポイントを発行。これをためると商品券などと交換することができる。提携する仲介会社は約8000社にまで増えた。

 コロナ下で入居率が落ち込んだ際には「空室撲滅プロジェクト」を敢行。30日以上の空室となった物件を地図上に落とし込み、近隣の仲介会社を訪問しリーシングを依頼。担当者が物件に赴き、内装や不具合の点検を行ったという。

組織強化にシフト 残業時間を軽減

 成長を続けてきた同社だが、07年ごろ経営の転換点を迎えた。

 それまで、重吉社長は新規の契約獲得にまい進していた。会社が大きくなるにつれ、経営を任せられる人材が必要だと考え、金融関係の企業で財務などを学んだ人を副社長として迎えた。「経営のプロといえる人だったから安心して、私は営業活動に専念した」と振り返る重吉社長。

 だが、帰社したタイミングにふと気が付くと、社内の雰囲気が重い。長年勤めていた社員の離職も相次ぎ、賃貸管理を行う日本財託管理サービス(同)では、1割以上の社員が離職していた。

 「これはおかしい」と無記名のアンケートを実施したところ、副社長への苦言が相次いだという。さらに、重吉社長にも「なぜ社内にいてくれないのか」と不安に思う社員の声が多く届いた。

 「当時の副社長には去ってもらい、自分は社内にいることを決意した」と振り返る。これにより「売り上げが下がってもいい」という決断だった。社員が安心して長く勤められる環境をつくることを優先した。

 その後、グループ全体で業務効率化を進め、現在の平均残業時間は、繁忙期も含め月11.5時間だという。

 残業時間の軽減に奏功したのは主に2点。一つ目が、DX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進してきたことだ。18年からは、ロボットがパソコンの単純作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入し、現在は138台のロボットが稼働。入居審査や請求データの作成などの業務に活用し、年間1万6885時間の業務削減となっている。

 二つ目が、定時を変更したことだ。午前9時から午後6時を基本に、担当業務などにより始業時間を変えた。結果として、残業時間の削減につながった。

土地活用を提案 サブリースも開始

 管理事業のスケールを拡大したことで、管理収入が全従業員の給料以上の水準となっている。これにより経営基盤が安定し、事業の多角化を積極的に推進する。

 14年4月には保険事業部を発足。オーナーや一般顧客に対し生命保険などをあっせんしている。同事業で年間2200万円を売り上げる。管理物件のリフォーム事業も強化。22年12月にクラスココンサルファーム(石川県金沢市)の提供するパッケージリノベーションブランド「Renotta(リノッタ)」に加盟。23年4月までの4カ月間で、68件を受注した。

リノッタで施工した物件の内装イメージ

リノッタで施工した物件の内装イメージ

 さらに、4月からは土地活用提案事業もスタートした。同社では、一棟ものの管理も580件あり、このオーナーらに対し、遊休地の活用を提案していく。すでにハウスメーカー13社と提携。建築後は従来の一般管理だけでなくサブリースのプランも用意する。今までは一般管理がメインだったが、資産家の顧客らに合わせたビジネスモデルの構築も進め、さらなる成長にまい進する。

日本財託 重吉勉社長写真

日本財託
東京都新宿区
重吉勉社長(60)

 

(柴田)
(2023年5月15日7面に掲載)

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