マンスリーマンション(以下、マンスリー)の法人需要が一部で復調している。新型コロナウイルス対策に伴う緊急事態宣言の解除により、飲食店関連の従業員のニーズが出てきているとの声が上がる。その一方、コロナ下で経営に苦しむホテルや民泊などが短期利用としてマンスリーと競合。都内では、この1年でマンスリーの相場が3割下がった物件もあり、競争が激化している。
宿泊施設参入で競争は激化
マンスリーの市場は、メーンターゲットである法人の需要が一部で回復する動きが出ている。
緊急事態宣言の解除に伴って、飲食店からの依頼が入ってきている運営会社もある。「通常営業に戻ったことで、深夜営業のサポートに入ったり、営業時間が遅いため終電がなくなるスタッフ用にマンスリーを借りる案件が出てきている。あくまで限られた店での話ではあるが」と関係者は語る。
マンスリー大手のレオパレス21(東京都中野区)では、同社で契約する物件のうち、2割程度がマンスリーで契約している。2020年度の新規契約数は8万9000件だったが、21年度は現時点で5万2000件と、繁忙期を残し伸びがよく、前期よりも微増での着地を予想する。法人では大手メーカーからの案件も増加。加えて、コロナワクチンの大規模接種に伴うサポートスタッフ用の滞在先の確保といったコロナ特需も追い風になっている。
自社で190件ほどのマンスリー物件を運営し、マンスリーの仲介も行うS-FIT(エスフィット:東京都港区)では22年4月の案件で法人からマンスリーの依頼が入るようになってきた。プロパティマネジメント事業部の中島守康氏は「新入社員研修に伴う依頼が20~30社から入っている。飲食やIT、エネルギー関係の企業などが、集合研修の実施を前提として物件確保に動きだしている」と話す。多い企業では1社で80戸規模の依頼があるという。
20年については、実施の判断がしにくい状況だったが、1年が経過し、企業側が感染症対策を徹底しながらの会場の確保や研修の実施体制に慣れ、22年の研修も行う方針を決めている。そのため新入社員研修案件の依頼につながっているとみる。
その一方で、競争は激化の一途をたどる。マンスリーなどのポータルサイトを運営するWeekly&Monthly(ウィークリーアンドマンスリー 以下、W&M:北海道札幌市)の黒木健次郎社長は「ホテルや民泊、簡易宿所などの参入で、特に大都市圏での競合が急増している。都内も供給過多で、コロナ前に18~20万円で貸していたのが、現在は12~13万円と5万円以上賃料が下がった物件もある」と語る。
W&Mが運営するポータルサイトの掲載物件数は約9万室で、この1年で7万7000室増加。約7倍になった計算だ。大手のホテルとの提携により、全国の案件を提供できるようになったりと、ユーザーに紹介する物件が広がった。
訪日外国人やオリンピック需要を見込み宿泊施設の供給が増加した、福岡、大阪、京都、神戸では宿泊施設の参入が増え、値崩れが起きているという。
S-FITの中島氏も「2カ月前くらいからホテルの参入が増えた感覚。以前は賃料15万円で貸せていた都内の1Kは10万円ほどになっている。運営事業者としては粗利が出ない状況ではないか。相場が崩壊している」と話す。自社運営の物件に関しては、担当者の人数が4~5人だったのを3人の少数精鋭とし、コストを減らしながら需要が戻るのを待つという。
(11月15日1面に掲載)