物価高などによって経済が不安定化する中、賃貸業界で存在感を増しつつある家賃債務保証会社。地域密着型のサービスで業界をリードしているのが、2024年に創業20周年を迎えるジェイリース(大分市)だ。東証プライム市場上場企業としての信用力も強みの同社。23年に社長に就任した中島土社長に、これまでの歩みと今後の抱負などを聞いた。
創業から20年 積み上げた信頼
―24年は創業20周年の節目となる1年ですね。
おかげさまで、2月に創業20周年を迎えることになりました。23年12月に本社のある大分市と東京都にこれまでお世話になった人たちをそれぞれ200人ほど招き、感謝の集いを開きました。本当に多くの人に支えてもらった20年だったということを改めて実感し、深い感謝の気持ちを抱きました。
―20周年を迎えるにあたり、会長とも何か話をしましたか。
はい。元々青年会議所(JC)の卒業生が集まって生まれた会社ですから、たくさんの人たちの力を借りてここまでこれたというのは、会長である父も私と同じ思いです。そのうえで、この節目を機に「今後も本業を伸ばすとともに、第二創業のつもりでさらに社会の役に立つ会社にしていきなさい」という言葉をもらいました。
―御社の企業理念とビジョンを改めて教えてください。
企業理念では「全社員と私たちに関わるすべての人の幸せを追求します」ということを最も大切にしています。その根底には、自分たち自身が幸せであるからこそ、初めて人さまを幸せにできるという価値観があります。一方、ビジョンでは「誰もが『自分の人生をまっとうできる社会』をつくる」ということに重きを置いています。人が人生をまっとうするには自由であることが必要ですから、ここには信用を保証するというサービスを通じて、多くの人が人生を自由に選択できる社会づくりに貢献したいという思いを込めています。
―どちらも、困っている人の助けになる御社らしい精神を感じますね。
実は、この理念やビジョンも、かつての若手社員が考えたものです。価値観というのは会社に根付いていくものです。それを言語化して残していくならば、社員の知恵を借りたほうが正しい方向性を描けるだろうと先代社長が発案し、理念のほうは今から10年前に私が座長を務め、50人以上の若手が集まって作りました。
― 20年の歩みの中で事業拡大の要因とターニングポイントになった時を教えてください。
信用が補完されず困っている人がいるという社会課題をビジネスに変換し、生活者の困り事の解決を手助けしてきたことが一番の成功要因だと思っています。一方で、事業拡大のターニングポイントは、16年の株式上場です。無形商材のサービスを扱う当社のような企業が、上場という形で社会からの信頼を得たことは非常に大きかったです。
事業用保証が好調 デジタル化も推進中
―御社が優れていると誇れる点はどんなところでしょうか。
33都道府県36拠点の全国ネットワークがあり、地域密着のサービスが届けられている点です。「いつでも隣にジェイリースがいる」と思ってもらうことで、不動産会社や、入居者に寄り添ったサービスの提供ができています。また、近年は「JAKINAI(ジェイアキナイ)」という事業用賃貸保証サービスも好調です。新型コロナウイルス禍の影響で事業を畳む人も多い一方、空きテナントの増加に伴って新たにチャレンジしたいという人も増えつつあります。そうした新規事業者を支えながらリスク意識を持つ家主の不安を取り除くことで、社会への貢献を果たせていると感じています。
―最近は不動産会社からどんな相談を受けますか。
残念なことですが、最近は死亡保障に関する問い合わせをもらうことが多いです。当社のサービスは一部に死亡保障を付帯しています。そのほか、高齢者の見守りサービスや緊急時の駆け付けサービスなどを付帯することもできるので、それらを案内することで、お困りの声に対応しています。
―デジタル活用の面では与信審査のAI(人工知能)活用を始めているそうですね。
DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けたシステム投資は、プロモーションの強化、人的投資と並んで現在力を入れる3本柱の一つです。当社に蓄積されたデータを有効的に活用した商品開発やウェブ申し込みをはじめとする手続きのデジタル化で、より利便性の高いサービスを届けていきたいと考えています。その中でAI与信審査の導入は審査の精度を高めるだけでなく、より多角的な分析ができるようになったことで、従来の審査では断っていたようなお客さまでも、与信が可能になったケースが出てきています。
―23年6月の就任後、新社長として力を入れていることを教えてください。
理念経営を加速することに力を入れています。最近は「人的資本」という言葉が盛んに使われますが、私は今の立場に就く前から社員は単なる労働力ではなく、大切な資源であると考えてきました。そのうえで、今は一人一人の成長を促し、母体である企業のさらなる発展を遂げることができる体制をつくりたいと考えています。私の就任後すぐに、取締役と執行役員を対象とした研修会を行い、先ほど述べた理念やビジョンを改めて確認しました。これによって社内の団結力がさらに強まりましたし、一人一人が自己実現の場として、良い意味で会社を〝使い倒す〞風潮が強くなったと感じています。
―そうした思いは、会社全体に浸透しつつありますか。
そうですね。その研修会をきっかけに、毎週月曜日の終業前に理念やマネジメントを学ぶ任意参加の勉強会が行われるようになりました。初めは20人ほどの集まりだったのですが、今では全社員の2割以上にあたる70人ほどが参加しています。その場では若手からベテランまでが役職関係なくグループを組み課題に取り組んでおり、そうしたところから、社内に承認と称賛の文化が広がりつつあることも強く感じています。
―最後に今後の目標と展望を教えてください。
ここ数年は増収増益を続けており、今期も全体で売り上げ124億円の目標に着実に近づきつつあります。そうした中で、今後も東証プライム市場上場企業として成長し続ける姿を、株主をはじめ、マーケットの皆さまに見てもらいたいと思っています。現在の中期経営計画は今期で終了するため、次の3カ年に向けた中期計画を策定中です。今後も成長を続け、より多くの人たちの幸せを作り出していく当社の姿を期待してもらえたらありがたいです。
「美女と野獣」の熱演に感動
合唱が趣味の中島社長。地元・大分県のNPO法人「おおいた第九を歌う会」に所属し、演奏会で歌声を披露することもあるという。一方で、ミュージカル鑑賞も好きで、特に劇団四季の「美女と野獣」が最もお気に入りの演目。ベートーベンの「第九」も美女と野獣も人類愛が描かれている点で共通しているといい、「魔法使いによって姿を変えられた彼らが歌うのは、どこまでいっても人間愛だ。人間であることがどれほど素晴らしいか、そしてそれを歌で語り続けるところに共感して、毎回号泣している」と美女と野獣への思いを熱弁。昨年、音楽ストリーミングで最も聞いた曲も同作の代表曲である「人間に戻りたい」だったそうで、音楽を聴きながらミュージカルの感動を思い出している。
会社概要
社名:ジェイリース
所在地:大分市都町1丁目3番19号 大分中央ビル7階
設立:2004年2月27日
資本金:7億1768万3200円
事業内容:保証関連事業サービス(家賃債務保証、医療費保証、養育費保証)の展開
会社メモ
賃貸業界における社会課題の解決を目指して、先代社長の中島拓氏(現会長)を中心とする青年会議所のOBメンバーによって設立。住居用家賃債務保証サービスを提供するほか、事業用賃料保証、医療機関向け医療費保証、ひとり親家庭向けの養育費保証などの保証サービスも提供している。
社長メモ
1982年1月7日、大分県生まれ。2004年に中央大学を卒業後、アコム(東京都港区)入社。12年にジェイリースに入社し、専務、副社長などを歴任。23年5月より現職。22年には日本青年会議所で第71代会頭を務めた。
(2024年1月29日7面に掲載)