264の遊休不動産を再生
老朽化したビルの再生活用などを行うNPO法人福岡ビルストック研究会(福岡市)は、各地域の不動産会社と連携し、まちの価値向上にまい進する。2014年から「九州DIYリノベWEEK(ウイーク)」に取り組んでいる。この活動は、九州を中心に休眠不動産の再生を通して地域活性化を目指してきた。
同研究会は福岡市で不動産業を営む吉原勝己理事長が発起人となり、06年に設立。九州4県(福岡、熊本、鹿児島、長崎)を中心とした、情報共有とスキルアップのプラットフォームだ。現在、23地域の事業体で構成されている。
各地域には、けん引役となるチームリーダーを配置。チームリーダーは、不動産会社の経営者や県庁職員、医師や大学教授のほか、中には地元の地域おこし協力隊が担う。
空きビルや空き店舗などをリノベーションし、地域の活性化に取り組む。旧役場を大ホールに改修したり、引退した路面電車をカフェに再生するなど多岐にわたる。
毎年11月には外部に向けたシンポジウムを開催。全23地域が登壇し、1年間の取り組みを発表している。各地域に出向き、現場を見学する訪問ツアーなども行う。
吉原理事長は「自分たちの活動を多くの外部の人たちが見に来る。他地域に負けないように本気でリノベに取り組んでいる」と話す。
九州DIYリノベWEEKを開始し10周年を迎えた時の様子
DIYで再生した空きビルでスタジオを始めるクリエーターや、再生した戸建て空き家で宿泊・飲食業を始める移住者も出てきた。
10年間の活動で、同研究会が再生させた遊休不動産は264棟。再生した戸建て空き家を使用する起業者は150人以上、それに伴う雇用者が160人以上になるなど、雇用も創出している。今年3月、地域の新たな価値をつくる取り組みを行ったとして、国土交通省が主催する「第2回地域価値を共創する不動産業アワード」でアワード大賞を受賞した。
11年目となる今年は、個別で活動していた地域を結びつける。8月末には、韓国で現地の事業者と共同で勉強会を行う予定だ。
「少子高齢化が進行する中、遊休不動産の利活用や方法が国策として検討されている。リノベの新しい可能性を模索していく」(吉原理事長)
NPO法人福岡ビルストック研究会
福岡市
吉原勝己理事長(62)
(2024年5月13日2面に掲載)