1万円の物件、2100万円で成約
センチュリー21・ジャパン(東京都港区)のフランチャイズチェーン(FC)加盟店として、関西圏で不動産事業を行うフォステール(奈良市)は、年間で約50件の空き家を買い取り、再販している。
フォステールは奈良県、大阪府、滋賀県に仲介店舗を持つ。主に再販するための居住用物件の仕入れや企画、工事手配、販売、アフターサポートが事業の中心だ。その中でも力を入れているのが、ほとんど売値がつかなくなった空き家の再生だ。
廃虚化した物件や再建築不可の物件、権利関係が複雑な物件などを価値のある形で流通させる方法を思案。立地や物件の特性を踏まえながら、売却先となるターゲットを明確にして、空き家をよみがえらせる。これまでに、ペットを飼う人やスローライフを志向する人、戸建て賃貸の保有を希望する投資家などを想定した物件を再生している。
奈良市にある市街化調整区域の農家住宅の事例では、屋根や床は抜け落ちて室内には植物が生えており、廃虚のような状況だった。取得価格は1万円。再建築もできない用途だったが、躯体だけ残し下地から補修を行った。
基礎部分の修繕が済んだ段階で、買主が自分好みに物件をリフォームできるように、いったん工事を中断。ペットを飼っている人や単身者にターゲットを絞った。実際に住んだときのイメージが湧くよう、新たにウッドデッキやドッグランスペースにもなる庭を作る方向でラフ案を作成した。その結果、ポータルサイトへの物件登録から5日後に最終的なリノベーションや外構工事も含めて2100万円の成約に至った。
岸川悦也社長は「売るのが難しい物件をプロとして売ることのできる形に仕上げることこそが、買い取り再販において不動産会社に求められることだ。その労力に対して、利益をのせて販売することで売主にも感謝される。自分が幼少期から住んできた物件が活用可能な形で売却できたことに、売主が泣いて喜んでくれるケースもある」と話す。
空き家活用を始めたのは8年ほど前からだ。当初は、管理を通じて売却仲介につなげるビジネスを模索したが、事業としてはうまくいかなかったという。岸川社長は「空き家管理自体はうまくいかなかったが、結果的に地方自治体とのつながりができ、売却が困難な空き家の相談が舞い込むようになった」と当時を振り返る。
今後も関西圏を中心に空き家の買い取り再販事業を拡大していく予定だ。
フォステール
奈良市
岸川悦也社長
(2024年7月1日8面に掲載)