トリニティ・テクノロジー(東京都港区)は、家族信託の対象となる財産を管理するアプリ「おやとこ」を提供しているテックベンチャーだ。設立3年強ながら、家族信託の市場拡大に期待する金融機関などから累計26億円を調達。これまで数多くの家族信託に関わってきた磨和寛社長に話を聞いた。
サブスクアプリで簡単に
提携企業、約780社
トリニティ・テクノロジーは、家族信託を軸とした法律に関わる専門知識とITを掛け合わせたサービスを提供している。2020年10月に創業し、24年6月末時点の従業員は120人だ。
磨社長は、司法書士時代に家族信託の契約を支援してきた。家族信託に関わる司法書士の主な仕事は、家族間の信託契約を支援することだ。だが、契約後、信託財産の管理に不安を抱く受託者が多かった。家族信託により受託者となった人の財産管理をサポートするために開発されたアプリがおやとこだ。同社に寄せられる家族信託に関する問い合わせは年間数千件を超えるという。約780社と提携を行い、主に金融機関との連携を通じておやとこを広めてきた。
ターゲットにするのは、アッパーマス層以上の地主や経営者だ。彼らは一定程度の資産を保有しているが、資産を守る経験や知識は持っていないことが多い。そのため、親が認知症を発症し、資産が凍結されて初めて問題に直面するケースも多いという。
家族信託におけるリスクは、ほかの兄妹が知らないうちに、受託者となった親族が資産を使い込んでしまう可能性だ。銀行もこの点を重く見て、家族信託の案内をちゅうちょしてきた。
おやとこでは、資産の保有者と関係する家族がアカウントを設定すると、信託財産の状況をアプリで確認することができる。あらかじめ設定した金額以上の引き出しがあれば、メールで通知もされる。資産を安全に管理できる点が評価され、提携銀行が増えた。同社のパートナー企業は、家族信託のサポートを通じて、早い段階で子ども世代と接点を持つことができる。
相続ビジネスの市場創出に期待する機関投資家からの資金提供が相次ぎ、24年1月には、SBIインベストメント(同)や三菱UFJキャピタル(東京都中央区)などから合計18億1000万円を資金調達した。調達累計額は約26億円に上る。これらの資金を使い、システム開発や採用を強化すると同時に、マスメディアを通じて、一般家庭に対する認知の拡大にも力を入れる。