目的と手段の違いを明確に捉える

【連載】現場レポート 賃貸業界のキャリア形成 VOL.92

管理・仲介業|2020年01月27日

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 賃貸の現場ではさまざまな変化が起こっている。不動産テックの導入しかり、日々の業務改善しかり。そして大切なのは「決める」こと。やるかやらないかの「論点整理」を論じる。

■「打ち手の議論」の前に、課題と目的の整理を

 「電子申し込みはどこの会社にしたらいいのか?」「IT重説はやったほうがいいのかね」「不動産会社は鍵を持つべきなのかね」「退去立ち会いはしたほうがいい?」

 日々、コンサルの肩書をもっていると、こうした質問をされる。ようするに「正解は何?」というような問いだ。こうしたときに、「どんな課題があってなんの目的ですか?」と聞くようにしている。

■「生産性を改善」したいの??

 例えば、「オーナーアプリを入れたい」けど、「どこの会社がいいのか」と聞かれる。「オーナーアプリを入れる」ことが「目的」となっている。「なぜその検討をするのかと聞くと、社長がオーナーアプリの話をどこかで聞いたから」といったキッカケ。それはキッカケなので、「目的」ではない。

 実は「いやー、毎月家賃明細をプリントアウトして封入しているのが大変だから、なんとかその業務を削減して、もっとオーナー開拓に時間を割きたい」というなら、「では、こんなアプリがありますよ。ただしアプリを使える若手オーナー向きですね」。

 一方で「業務を削減したいのでしたら、その印刷・封入の作業を代行してくれる会社を探しましようか」という打ち手もあり得る。どちらの打ち手が良いかは、目的によって異なる。

 「オーナーに先端企業だと思われたいから」ならアプリのほうがいい。「オーナーの子息との関係性を強化したい」のにも効果的だ。しかし「工数削減を目的とするならば、外注化とのてんびん」となるべきである。それでも「オーナーアプリからシステム対応で自動で印刷封入発送」という仕組みでも良い。結果として工数削減できればよいのである。

■鍵をなくすか保有するか

 先日は、「管理会社は鍵をなくすべきか、保有すべきか」という議論になった。ところが、会議の参加者の役員の間で「目的が違う」ということがわかった。

 「私の会社で部屋を借りて住んでいるけど、当社の社員がだれでも鍵を開けられるのは怖い」という女性管理職。「でも、安否確認のときにイチイチ鍵を壊すというのもどうかと思うよ。やっぱりちゃんと鍵も管理してこそ管理会社だろう」というベテラン役員。「課題」が違い「目的」が違うため、論点がかみ合わない。

 聞いている社長は「うーん、どっちの意見もわかるがどうしよう」と判断保留するか、「自分の好き嫌いか、直感で決める」となってしまう。まあ、それでも決まらないよりはマシなのだが。

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