一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会(以下、管理士協議会:東京都千代田区)は7日、国家資格化後初となる賃貸不動産経営管理士(以下、管理士)試験の結果を発表。合格者は1万人超と過去最多となった。合格率は30%強と前回より上がったものの、難問化が進む傾向にあり、賃貸管理会社側の試験対策が課題になっていきそうだ。
合格率は31.5%、今後は難問化か
令和3年度の管理士試験は、2021年11月21日に実施され、過去最多の3万2459人が受験。7日の結果発表では、合格者は1万240人と、同試験の開始以降初めて1万人を超えた。
合格基準は50問中40問と正答率が8割。合格率は31.5%と、20年の29.8%を上回った。
管理士試験に詳しいKen(ケン)ビジネススクール(東京都新宿区)の田中謙次社長は「問題自体の難易度は上がっているが、正解を導きやすい出題形式の問題が多かったため、必然的に合格基準点が大幅に上がってしまったものと思われる」とコメントした。
国家資格となり最初の試験であり、有資格者を増やすという狙いがあったものと田中社長は推測する。
同試験の受験者が増えた背景に、2021年6月15日に全面施行された「賃貸住宅管理業適正化法(以下、管理業法)」の影響がある。同法において、管理戸数200戸以上の登録事業者に対し「業務管理者」の設置を義務化した。
業務管理者の要件は①令和2年度までの管理士取得者で移行講習を修了②宅地建物取引士で指定の講習を修了③令和3年度以降の管理士取得者、の三つのいずれかを満たすことが必要だ。そのため、一定規模の賃貸管理会社は業務従事者の管理士取得を推進する必要が出てきている。
今後の管理士試験については「50点満点の問題であれば、30~35点あたりを合格ラインとするような問題が理想的といえる。したがって、次年度はより難問化すると推測される」(田中社長)
管理士取得を進めるにあたっては、学習内容が重なるので、宅地建物取引士(以下、宅建士)とのダブル受験も有効と田中社長は話す。令和3年度の出題では、宅建士試験にも管理士試験にも建物賃貸借における残置物の処理の問題が出ているなど共通する部分があった。
各社、従業員の資格取得のための環境整備なども求められていきそうだ。
(2022年1月17日1面に掲載)