ストック拡大、人口減でも成長
ハウシード
横瀬 直史社長
積み上げ型で企業を持続
静岡で約5000戸受託 「積み上げて持続」
人口減少と地価下落が続く地方での不動産業は、仲介や売買といったフロー型の収益だけに頼っていると、市況に翻弄(ほんろう) されやすい。新規供給に先細り感が見える衰退エリアの環境下で必要なのは、「売る」よりも「積み上げて持続させる」経営だと考える。
当社は、静岡県富士市と富士宮市で、毎期の収益の最低ラインを押し上げる「ストック収益」を中心に据えて年300戸の管理純増を実現する仕組みを築いてきた。このストック収益について、具体的な数字を出して説明する。
エリア内の賃貸物件は約4万7000戸、有料管理は1万6450戸で、当社はそのうちの約30%となる4956戸を管理して営業利益6584万円、純利益7069万円を上げている。売り上げの約45%は、毎期繰り返し積み上がる恒久的な売り上げ(ストック)で占められ、市況の波を受けても最低ラインが崩れにくいことがストロングポイントとなる。
ストック収益は管理料、契約更新、保険更新、付帯手数料の積層で構成される。当社の場合、管理1戸の増加で、管理料3万3546円、保険手数料3765円、更新料4271円、合計4万1583円が1年に上積みされる。年300戸増であれば、約1247万円の増収だ。賃料を直接上げても管理会社の取り分は増えにくく、稼働率低下のリスクもある。空室は持っていてもマイナスでしかない「不良在庫」と捉え、空室日数の短縮と継続年数の延伸でLTV(1戸あたりの生涯粗利)を伸ばすことを重視した。
セミナーでは立ち見がでるほど盛況だった
利益を支える3つの装置
当社の収益の仕組みを支えているのが「3つの装置」だ。最初の「装置」は、ストック収益の設計。その中核となる施策が、当社独自の金利0%のリフォームローン「ゼロシード」になる。原状回復および改修の借入金利を当社が負担するというもので、オーナーは金利負担なく投資できる。適用は当社による一棟管理を条件としているため、部分管理物件を一棟丸ごと管理移管してもらえる決め手になり、管理戸数増にもつながった。完工後約1週間で費用を入金してもらうようにしているため、回収までの期間が短いのも大きなメリットだ。
続いて二つ目の「装置」は、各部署のPL(損益計算書)運営およびリスク管理だ。支店の店長や部門長が、部門別損益の計算を担当し、売り上げだけでなく人件費・広告費・社用費まで含めて運営する。各エリアの支店を小さな会社として動かし、目標達成のための施策とコストを現場で設計・実行することで、空室期間の短縮、付帯率の向上、原価抑制といった改善が見込める体制を作った。
最後の「装置」は、経理をはじめとしたバックヤードのDX(デジタルトランスフォーメーション)化による、ミスの軽減と信用の確保だ。請求書はPDF形式で受領。承認・決裁のワークフローと電子保存を徹底したうえで、基幹となる賃貸管理システム「賃貸革命10」に登録し、振り込みデータを自動作成する。それまで紙の書類を使い、手入力中心だった支払い処理をデジタル化したことで、工数を約80%ほど削減。未承認の支払いや、誤送金といった重大リスクの発生は、この仕組みで抑えられるようになった。
受注で収益底上げ 変化に強い体質
ストック収益の強みは、その継続性にある。管理戸数×1戸あたりのストック単価で翌期の土台が決まり、年300戸の管理増が収益の最低ラインを底上げする。ストックが受注を生み、受注がストックを強くする流れを循環させながら、さまざまな摩擦を減らしていくことで、潤滑な運営を進めることが可能となる。当社は先に挙げた三つの「装置」を取り入れることで、衰退エリアでも「単なる安定」ではなく、財務体力が強く、金利変動・災害・制度変更など急激な外部環境の変化にも揺らぎにくい経営を実現できたと考えている。
(2026年2月2日15面に掲載)




