郊外移住、コロナ感染拡大で継続か

LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)総研

インタビュー|2022年01月17日

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LIFULL HOME 'S総研 東京都千代田区 中山登志朗副所長(58)

 2022年の不動産市況はどうなるのか。21年の状況や不動産マーケットに影響してきそうな要素などを踏まえつつ、専門家が22年の不動産ビジネスを大予測する新年特別企画。今回は、LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)総研(東京都千代田区)の中山登志朗副所長に話を聞いた。

22年キーワードは「株価」

人口流入の回復で賃貸マーケットも安泰

 2022年の賃貸住宅マーケットについて、LIFULL HOME'S総研の中山登志朗副所長は「もし、新型コロナウイルスの感染拡大が続くようなら、首都圏では郊外エリアへ転居したい人の潜在的なニーズが22年も続くだろう」と予想する。その理由は21年の賃貸マーケットを振り返った時に二つの要因として浮かび上がってくる。

 一つ目は、賃料の問題。首都圏では都心と東京郊外の賃料が、場所によっては2倍以上になることもあり、住宅にかかる毎月の支出を考えると転居の理由になりうる。実際同社のデータによると、東京都心部から1時間から1時間半の距離にあるエリアの賃料が堅調であったという。

 例えば、東京都八王子市では、21年7月以降、単身者向けの賃貸住宅の賃料相場が7万円半ばから毎月数百円ずつ上がってきた。ほかにも神奈川県の厚木市、海老名市などの神奈川県県央部、千葉県柏市などの賃料相場が安定して堅調だったという。

 二つ目は、テレワークの影響だ。都内は金融、証券、情報通信関係といったテレワークの導入を進めている業種の本社やオフィスが集中しており、今後もテレワーク継続となると、その企業で働く社員らによる郊外転居への潜在的なニーズも続くという予想だ。

 地方に関しては、近畿圏、中部圏、札幌、仙台、広島、福岡の地方4市などの家賃差は1.3~1.5倍程度であるため、郊外に転居するほどの後押しになりにくい。加えて、テレワーク実施率が10%程度と低いため、今後の賃貸マーケットについても変化はないとみる。

 中山副所長は「二つのシナリオが考えられる。一つ目は、コロナの感染拡大継続によって、郊外需要がさらに顕在化する可能性。二つ目は、コロナの影響をある程度脱した状態を維持できれば、利便性の高い都心に住みたいと考え始める人が多くなり、22年春には都内への流入人口も増大するだろう。そうなると、都心部の賃貸マーケットの需要が高まり、比較的安泰な1年となる」と語った。

投資と実需重なり中古物件の価格高騰

 投資向け物件について中山副所長は「22年も収益不動産の価格は上昇していくだろう。コロナによる収入減で不動産投資に興味を持つ人が増えている」と投資家の物件購入意欲が旺盛であるとみる。

 「特に中古物件の価格は22年に10~15%は上昇した。コロナ下で流通の戸数が落ちた一方、賃貸から中古住宅を購入しての住み替え需要が増えた。特に都心部や交通の利便性が高い中古マンション、中古戸建ては明らかに価格が上昇している。ニーズが投資と実需の2段重ねになっていることが原因といえる」(中山副所長)

 そんな中、金融機関の融資状況は、不動産投資ローンの金利がある銀行では1.6%程度で借り入れできる状況だ。

 この低金利により資産の付け替えに関する環境が整っていることが投資家の物件購入意欲を高めている。売り手の設定も強気だ。

 機関投資家に関しては、コロナ後も世界的に割安感のある日本の不動産に投資したいとの意向がある一方で、開発案件は多くはない。22年の収益不動産マーケットは、限られたパイを希望者で取り合う構図が続き、価格は値上がりするとの見立てだ。

 中山副所長は「賃料水準が上がらなければ利回りは落ちるため、運用することを考えると投資を始める時期としてあまりタイミングが良くないのではないか」と指摘する。

 22年の不動産ビジネスのキーワードは「株価」だという。「株価は企業業績の反映。企業の業績が好調で、株価を維持し、それなりの収入が得られれば不動産購入や投資に積極的になれるはずだ。株価の推移に注目することが肝要」と中山副所長は語った。

(2022年1月17日24面に掲載)

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