当記事は賃貸住宅フェア2024in東京で講演したセミナーを書き起こしたものです。
講演者
innovate
滋賀県彦根市
西野浩樹代表取締役
既存入居者の満足度を重視 職人と連携し、迅速に修繕
顧客層を把握 リノベで改善
私が行っている、賃貸物件を満室にする戦略について話す。具体的には、市場調査、物件の改善、適切な家賃設定、顧客対応といったところで、後のものほど重要だと考えている。
まず市場調査。これは競合物件の分析が必要だ。不動産の検索サイトなどを使って近隣の物件を調査し、自分の物件と比較する。周りの物件の空室率や家賃、設備、専有面積、築年数などを調べれば、自分のライバルになる物件がおおよそ見えてくる。
続いて顧客層を調べる。物件についてはリーシング会社が詳しいので、ターゲットとなる顧客の層や需要についてはリーシング会社に聞いてもいい。
顧客層がわかったら、その層にアプローチするための戦略を立て、マッチするリフォームやリノベーションをして物件の魅力を高める。これが物件の改善。清掃やメンテナンスをしっかりすることも改善になるが、リーシング会社や管理会社任せにすると掃除ができていないケースがあるため、定期的に、例えば1カ月に1回ぐらいはオーナー自身が見て回った方がいい。
値下げは最終手段 設備の見直しが先
適切な家賃設定は、周囲の物件に対して競争力のある家賃ということになる。注意点は、特典や割引といった部分。礼金無しや、家具や家電が付いていたり、フリーレント期間を設けたりと、いろいろな手段があるが、家賃を下げたり、何カ月か無料にしたりすることは最終手段だと考えてほしい。
これを最初にやると、その後に打つ手が無くなるので、まずは入居者に満足してもらえる環境を整えることから始めるべきだ。家賃に反映できるような設備を付ける、リフォームやリノベをする。それでも決まらなかったら家賃に手を付ける。この順序を間違えないでほしいと思う。
トラブル対応が肝 プロから知識学ぶ
最後に顧客対応。賃貸事業は顧客となる入居者に家賃を払ってもらう事業のため、私としては円滑な顧客対応がもっとも重要だと考える。では、その顧客対応を良くするために何をすればいいのか。
これは自主管理の大家などは特にそうなのだが、トラブルの対応時に頼りになる職人とつながりを持つことが大事だと思う。メールやLINEなどを使って職人との連絡を密にする、積極的にコミュニケーションを取る、といったことは当然必要になるが、職人と仲良くなる方法として、一緒に食事をすることを推奨したい。職人との食事中の話は、大家にとってヒントの宝庫ともいえるものだ。彼らは知識が豊富で、こちらから質問すれば、「こうしたほうがいい」「こうすれば安く済む」といったように、的確な答えが返ってくる。職人と良い関係を築くためにも普段から食事に行くようにして、いろいろな話をすることが大切だと思っている。
不動産関連の人たち、管理会社、仲介業者なども同様で、やはり食事を一緒にして、情報を得たり、こちらから話したりして、彼らと仲良くなり、どれだけ些細なことでも大家に連絡してもらえるようにしておく。そうしておけば、トラブルが発生しても小さなほころびの段階で対応できるようになる。
私は、蜂の巣ができた、水が止まらない、エアコンが壊れた、といったトラブルが発生したときに、どれだけ早く対応できるかが大家の腕だと思っている。ここで管理会社からいち早く連絡をもらい、職人に話をしてすぐ動いてもらう。普段から彼らと良い関係を築けていればこそできることで、ひいてはこれが満足してもらえる顧客対応につながる。
空室対策は空いている部屋を埋めることと思いがちだが、最も効果がある空室対策は、現在入居してもらっている人にそのまま継続して住んでもらうことだと考える。自分の物件の入居者に満足してもらえる生活が提供できていれば、空室など恐るるに足らないはずだ。
(2025年1月6日49面に掲載)