当記事は賃貸住宅フェア2024in東京で講演したセミナーを書き起こしたものです。 |
講演者
フジ総合鑑定
東京都新宿区
藤宮浩代表取締役
評価額を見直すことが重要 期限内は過払い分の返還可能
適正な評価が困難 複数ある減額要因
相続税における土地の評価について話す。相続における土地の評価額を見直すことにより、相続税を節税することができる。一度納めた相続税でも定められた期限内であれば更正の請求をすることによって、過払い分が返還されるケースがあるのをご存知だろうか。
相続される資産は、不動産、土地といったものが大きな割合を占める。地主であれば資産の9割以上が土地だという人もざらではないだろう。しかし、相続時の土地の評価については、適正な額になっていないケースをよく見る。評価額が実際よりも高く算出され、相続税を払い過ぎていたとしても、税務署側から過払い分を返還してくれることはほとんどない。
土地の評価額はさまざまな要素を考慮しなければならず、適正な相続税の額を求めるためには複雑な計算をする必要がある。その基準になる額が、相続税路線価。市街化区域内の建物が建てられる土地については、1㎡あたりの路線価が設定されている。
例えば路線価が10万円で面積が120㎡の土地であれば、10×120で1200万円の評価額になる。しかし、土地というものは個別性が強く、その土地ごとの特徴を反映しないと適正な評価額は出てこない。
評価額の計算が複雑になる理由は、主に減額要因による。道路に面していない土地や、傾斜地、形状の悪い不整形地や旗竿地など、その土地の立地や形状により評価額が落ちる理由はいくつもある。さらに不動産関係の法律や各都道府県の条例等の法規制、地役権や借地権といった第三者の権利が付着している土地か否か。線路沿いで電車が通るたびに振動したり、騒音が著しい、墓の隣にある忌み地、反社会勢力の事務所やカルト宗教の建物の隣、後は掘ると埋蔵文化財が出てくる埋蔵文化財包蔵地といった要因でも評価額が落ちる。
4棟ある土地の例 2000万円超の評価減
土地の評価額の変動について、実際の事例を挙げる。20万円の路線価の道路と10万円の路線価の道路に面した、440㎡の一団の土地。ここに四つの建物が立っていた。すべて貸家で、貸家建付地という扱いになる。これが簡易な計算の場合、どのような評価になるか。まず、440㎡全体について、20万円という高いほうの路線価が正面路線価ということになる。これは複数の路線価の道路に面している場合、原則として最も単価が高い路線価を採用するためだ。さらに、すべての土地が角地(側方加算がされる土地)と見なされた。角地は評価が上がる。これらの要因から、算出された評価額は7324万円となった。
しかし、この計算では四つの土地すべてを同じ基準で扱っている。適正な相続税の評価を行う際の原則として、利用区分や権利関係ごとに分けて評価すべきということがある。そこで、この土地について土地家屋調査士の現況測量をした。その結果、四つの建物のうち二つが立っている土地は高い路線価の道路に面しておらず、10万円の路線価となった。さらに、三つの土地は側方加算の条件から外れており、角地とみなされる土地はひとつだけに。また、不整形地の扱いになる土地もあった。これらの要因を加えて四つの土地を個別に計算し、合計した最終的な評価額は4997万円。2327万円の評価減となった。
満席だったセミナー会場
このように評価額が当初の計算より下がり、払った相続税の一部が戻ってくるということは、それほど珍しい話ではない。相続税を納めてから5年以内、亡くなられてからであれば5年10カ月以内の期間内なら、更正の請求を行って過払いが認められれば差額が返還される。
相続した、もしくはこれから相続するものの中に、個性が強い土地がある場合や、土地の評価額が高い気がするというのであれば、ぜひ土地鑑定士や土地関係に強い税理士に相談していただければと思う。
(2025年1月6日49面に掲載)