投資用不動産の開発・販売などを行うグローバル・リンク・マネジメント(以下、GLM:東京都渋谷区)はさらなる事業拡大に向け動く。2027年度の売り上げ1000億円、経常利益100億円実現のため事業の柱を増やしていく。土地の販売や収益不動産の再販事業を伸ばす計画だ。
新中計始動、資本効率を重視
24年度、56%の増収
GLMは、25年度を初年度とする中期経営計画(以下、中計)を策定。27年12月期に、売上高1000億円、経常利益率10%の達成を目指す。
業績は成長曲線を描き続けている。24年12月期決算は売上高が前期比56.3%増の644億8200万円、経常利益は同20.6%増の51億3800万円。主軸事業の賃貸マンションの開発・販売は、1228戸を引き渡し、前期よりも149戸積み増した。
金大仲社長は「環境に配慮した物件の実績が増えてきている。国内インフラ系企業の資金を運用する機関投資家や、国内外の保険会社、同業者のデベロッパーが当社の物件を購入している。小口化するにしても、自社保有するにしても、安心して事業に組み込める物件というブランディングができてきたと実感している」と語る。
環境に配慮した賃貸マンション開発を強みとする
土地販売・再販推進
フロー収益の向上に向け、成長の柱として据えるのは、土地企画事業と再生事業だ。背景には、金利と建築コストの上昇リスクがある。「市場の不透明性を踏まえ、今後は、開発事業より資本効率と利益率が高く見込める土地企画事業と再生事業にリソースを投下する戦略とした」
27年12月期の売上総利益率の目標は、開発事業が14.0%で、再生事業と土地企画事業がそれぞれ20.0%。現在主軸である開発事業の利益を上回る展開を目指す。
土地企画事業で資本効率と利益率の向上が見込める理由の一つは、キャッシュポイントの早期化だ。
土地企画事業は、複数の土地の権利調整を行い、解体後にまとめてほかの開発事業者に販売する。そのほか、土地を取得し建築確認を終えた段階で、投資家に販売し、場合によってはパートナーのゼネコンを紹介する手法も取る予定だ。
GLMにて土地の仕入れ・開発を行い、投資家に販売する「オンバランス開発」では事業期間に約2年を要する。対し、土地企画を終えた段階で販売するパターンでは、最短約6カ月で売り上げを立てられる。販売のタイミングを早めることで、資産回転率の向上が期待できる。24年12月期の19件から、27年12月期には32件にまで増やしていく。
再生事業においては、都心のオフィスビルを購入し、バリューアップ工事後、投資家に販売する。24年12月期に4棟を手がけ、実績では賃料を平均27.5%アップして販売に至っている。再販物件も在庫期間は6〜9カ月ほどと、同じく資本効率を高める事業の立ち位置だ。
27年12月期には、売上総利益170億円を目指す中、土地企画事業と再生事業で58%と、現在主軸の開発事業の利益を上回ることを目指す。
ホテルやビル開発
開発事業では、引き続き、「オフバランス開発」を活用しながら物件数を維持する。
オフバランス開発の場合、GLMにて案件を企画・提案し、パートナーのゼネコンなどが土地の取得と建築を行う。物件の竣工後にGLMが売買契約を締結。その後GLMから投資家に販売する。資産・負債が軽くなり、資金調達コストの最適化とともに総資産利益率も高くなる。
オンバランス開発にオフバランス開発も組み込むことで資本効率の向上を図り、成長に向けて十分な仕入れを実現させる戦略だ。
ホテルや商業ビルの開発にも取り組んでいく。
土地の販売や、再販、開発物件の多様化など、新たなことにチャレンジする同社だが、既存顧客の要望に応えるのも狙いの一つだ。
国内外の投資家からは、引き続き住宅の希望もあれば、オフィスやホテルを買いたいという声も上がる。すでに取引実績のある機関投資家や事業法人であれば、投資基準を把握している同社が、その基準に見合った物件調達ができる。取り扱いアセットの幅の広がりにより、投資家との継続した取引関係が見込める。
「投資家の要望に応じるのであれば、賃貸マンションも今以上に開発したいところだが、建築費が高騰し、マネタイズまでに時間がかかる。開発案件の数は保守的に設定している。マーケットの状況が変われば、またレジデンスの開発を増やしていく可能性もある」
1人利益5000万円へ
新中計の達成に向けて、従業員の生産性向上を図る方針だ。従業員1人あたりの売上高は約5億円、経常利益は約5000万円にまで引き上げていく。
必要なスキルを可視化し、スキル研さんの機会を増やすなどの人材戦略を策定。
従業員の平均年収は817万円(23年12月末時点)だが、27年12月期には1000万円以上を目標とする。販管費は増加する見込みだが、それ以上に売り上げが伸びる想定だという。
ESG(環境・社会・企業統治)経営の目線では、「環境」について、ゼネコンや資材メーカーなどサプライチェーンの関係企業とも連携。廃棄を減らすなど生産過程での環境配慮においてリードしていける会社になりたいと、金社長は話す。
現在は「社会」の目線で、AI(人工知能)を活用し、入居者や利用者の生活をサポートできるような独自のサービス開発も検討する。
(2025年3月17日20面に掲載)