太陽光発電・蓄電池に補助金
広島県東広島市は、4月より広島大学東広島キャンパス周辺地域で脱炭素化事業を進める。事業の対象となる民間の集合住宅114棟3434戸のうち、賃貸物件が大半を占めるという。太陽光発電・蓄電池や一括受電システムの導入、エアコンや給湯器の省エネ化を促す。
同市は、2024年9月に環境省の認定する「脱炭素先行地域」として、本事業の提案が採択された。脱炭素先行地域とは、50年のカーボンニュートラル実現に向けて、30年度の目標達成を地域特性に応じて実現する地域のこと。広島県内では初。
対象地域は学生街であり、大学移転から約30年になり、築年数の経過した物件が多数ある。集合住宅やその設備の更新が課題となっていたところ、本事業の取り組みにより学生街の再生が図れることが評価され、脱炭素先行地域に選定された。
事業の対象となる賃貸住宅では、太陽光発電や蓄電池のリース費用、エアコンや給湯器の更新費用に対して補助金が受けられる。補助割合は、それぞれ導入費用の約3分の2。太陽光発電や蓄電池の設置については、設備の法定耐用年数である17年間の間に建て替えが発生しない物件が対象となる。
補助金の適用には一括受電システムの導入が必須であり、各設備の導入と併せてオーナーへ提案される。
一括受電システムでは、集合住宅における再生可能エネルギーを最大限活用するため、物件全体で一口の単一の電力契約とする。太陽光発電により得られた再生可能エネルギーを、共用部だけでなく各住戸でも活用できれば、太陽光発電設備や蓄電池の持つポテンシャルをより発揮できるようになるという。
一般的な集合住宅では、電力会社との契約や電気の供給は、住戸ごとに行われている。一括受電システムへの切り替えには各戸に事前の同意が必要。
同事業は地域の脱炭素化を推進するだけでなく、オーナーや入居者にもメリットがあると市は話す。オーナーは、省エネ性能の高い設備を市の補助金を活用しながら導入できる。太陽光パネルや蓄電池の設置により、停電時でもオートロックや防犯カメラなどのセキュリティーシステムが動作する点は、入居者にとって安心材料になる。
対象となる賃貸物件の約8割は管理会社を通して運営されている。同市は事業開始に先立ち、管理会社へ事業の説明を実施。オーナーへの訪問も順次進めている。
東広島市環境先進都市推進課の永久丈洋企画推進係長は「脱炭素化の設備やシステムは、まず25年度に5棟、28年度には80棟まで導入するのが目標。事業最終年度の30年度までに、対象の賃貸物件すべてに普及できるよう進めていきたい」と話す。
(2025年4月14日17面に掲載)