民間が再生、移住者獲得へ
人口約5600人、約2600世帯を擁する町の空き家バンクから、民間再生の賃貸住宅が生まれた。
静岡県川根本町と、「空き家買取専科」の屋号で空き家再生を行うSweets Investment(スイーツインベストメント:静岡市)は合同で、9月5〜6日の2日間、川根本町への移住者向けに賃貸住宅の内覧会を実施した。内覧会には、計12人が参加。入居希望者のほか、空き家再生ビジネスに関心を持つ事業者や自治体の空き家バンク、移住促進の担当者らが訪問した。
同物件は、空き家バンクに登録されていた築36年の戸建て住宅をSweets Investmentが取得し再生。戸建て賃貸として運用する。入居希望者からの問い合わせ対応から内覧までは、川根本町役場の担当者が務める。入居可能日は9月15日で、19日時点で1件の内見予定が入っている。
同町が抱えていた課題は、移住ニーズに対し、住む場所の確保が追いついていない点だった。空き家バンクには常時10件ほどが登録され、2024年度実績では12件の登録に対し11件の物件が循環した。川根本町役場経営戦略課の小笠原聡定住・移住推進室長は「売買のニーズが一定数ある一方で、物件購入以外の選択肢は少ない。公営住宅は住宅確保要配慮者向けの入居条件を掲げているため、年収の上限などから移住者は入居対象から外れてしまう。お試しで住める賃貸住宅の確保が必要だった」と話す。
今回の物件は、延べ床面積132.45㎡の6DK。「気持ちよく住める」という視点で改修箇所を絞り、費用は140万円弱。家賃は5万9000円に設定した。駐車場は、物件敷地内のほか、側にある閉業した商店のスペースを確保し、1台あたり月1000円で貸し出す。移住者は、3年間の定住を条件に月2万円の家賃補助が支払われるため、実質家賃は3万9000円となる。
水回りはキッチンを交換し、風呂とトイレはクリーニングで対応。各部屋の内装は既存の雰囲気を生かしている
Sweets Investmentの石川優治取締役は「3年間のお試し入居を経て、購入してもらう出口を想定する。25年度内に2件の再生を目指す。賃貸住宅への入居から購入といったサイクルをつくれると、年間2世帯の定住者を呼び込むことにつながる」と語った。再生対象の条件は、改修費を抑えるために新耐震物件を優先していく。
(2025年10月6日2面に掲載)




