実際に起こったカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)への不動産会社の対応や、そこでの学びについて紹介する。ベルデホーム(埼玉県久喜市)は、家財保険の加入について電話口での入居者とのやりとりが激化。一度、時間を空け、双方の対応者が変わったことで、沈静化したという。
全社でメール共有、事態把握
久喜市を中心に1405戸を管理するベルデホーム。同社がカスハラ対策で重要性を感じたのは、やり取りの中で双方の気持ちが熱くなったときは、いったん「時間を空けること」だ。
ベルデホームの管理物件に入居する30代男性Aさんは、会社都合で個人契約に切り替えることになった。同社から家財保険の申込書を送付したが、返送がなかったため、50代女性のスタッフがAさんに電話した。「このまま入金がないと、無保険状態になる」と伝えたところ、Aさんは「保険の加入を強制するわけ?」と反発気味だった。無保険だと火災発生時の入居者負担が莫大になるため、皆さまに加入をお願いしている、とスタッフは説明。対しAさんは「俺が聞いていること理解できないの?強制なの?入らなかったら、契約できなくて出てけということだな!」との言葉をぶつけた。スタッフも「じゃあ、そういう意味ですよ!」と売り言葉に買い言葉となってしまった。
横でスタッフの対応を聞いていた、当時管理部の部長だった熊切伸英社長。「責任者を出せと言われたので」と急に電話が渡された。
熊切社長に代わってからもAさんは激しい口調だった。「テメェのところは社員にどんな教育してるんだ!」から始まり、「保険は強制だから出て行けとはっきり言った」と主張。
「話した内容の詳細を確認してみないと」と返答した熊切社長。事実を確認し、折り返し連絡をすると伝えた。
Aさんは「強制だって言っていたら、どうする?」「話の通じない野郎だな!もういい、もし言っていたらお前のことを殴りに行く」と発言し、電話を切った。
その後、スタッフにヒアリングした。「保険に入らないのはよくないとの趣旨で伝えたが、言い方が悪くて申し訳ない。でも保険には入ったほうがよい」と先方に説明することでまとまった。
Aさんが殴りに来るなら、警察に通報するつもりで電話をした。すると電話口に出たのは、Aさんの妻だった。「主人は冷静になってからでないと話ができないと言っており、私が承ります」
それに対し熊切社長も、誤解を招く言い方をしたことを謝罪。来社するのであれば待っている旨を伝えた。
翌日、Aさんの妻より「保険に加入する。言い過ぎで申し訳なかった」との連絡があり、事態は収まった。
熊切社長はこう語る。「電話で顧客が激怒している場合、時間を置くことで、相手が冷静になってくる。『責任者を出せ』と言われたら、席を外しているので、後ほど連絡する旨を相手方に伝えること。その間に、担当者と話をして状況を把握。問題の原因を探っておくのがよいだろう」
挑発的な言葉をぶつけられても、相手に発言させておくのがよいという。
「暴言を吐く顧客には、反発や逆切れをせずに冷静に対応することが大切。暴言を返すと同じ土俵に立ってしまい不利になる。録音されて『ユーチューブ』などで公開されても問題がないレベルで対応するのがポイント。いつ、どのように切り取られてネットで公開されるかわからない。相手方も自分の発言がまずいと自覚してくるものだ」(熊切社長)
同社では、会社宛てのメールを全社で確認するようにしている。クレームやカスハラに該当するような案件は、メールで状況を報告し共有。ほかの社員が担当をすることになっても、事態を理解しているため、問題が悪化しにくいという。
(2025年12月1日4面に掲載予定)




