自治体の物件・予算で居住支援【地域連携×要配慮者入居】

啓友エステート,たけのこハウス

管理・仲介業|2026年04月17日

 地元自治体と手を組み、その所有物件や事業予算を活用して住宅確保要配慮者(以下、要配慮者)の居住支援を行う不動産会社が登場している。啓友エステート(大阪府交野市)は大阪府営住宅を借り上げ、要配慮者に住宅を供給。たけのこハウス(兵庫県尼崎市)は、尼崎市から要配慮者の住まい相談の事業を委託された。

公営住宅借り上げ、業務受託も

啓友エステート、府営住宅 運営補助金を申請

 要配慮者の賃貸仲介やサブリースを中心に不動産事業を行う啓友エステートは、「大阪府営牧野北住宅」の4戸を居住サポート住宅として登録した。公営住宅を借り上げて改修することで物件の取得費用を抑え、安価な家賃で経済的に困窮する人に提供していく。

 大阪府営牧野北住宅は、枚方市に立つ府営住宅だ。各棟5階建てで間取りは2K〜3K、いずれの棟も築年数は50年超。老朽化のため建て替えが決まっており、全体の3〜4割ほどが空室の状態となっている。

啓友エステート

 啓友エステートは、建て替えまでまだ期間がある3棟のうちの4戸を大阪府から借り上げた。契約は1年の定期借家契約で、賃料は府と交渉し運営が可能な金額に調整した。床や壁、水回りの最低限のリフォームを行い、家賃3万8000円・管理費1100円で要配慮者にサブリースする。家賃は枚方市の生活保護の住宅扶助費に合わせた。古い住宅だったこともあり、リフォーム費用は1戸あたり50万円ほどかかっているという。

 同物件には安否確認・見守り・福祉サービスへのつなぎの3援助を備え、居住サポート住宅とした。各居室にヤモリ(東京都渋谷区)が提供するモーションセンサー型見守りサービス「みまもりヤモリ」を設置し、安否確認を行う。管理費の1100円は、みまもりヤモリの利用料だ。

 訪問による見守りと福祉サービスへのつなぎは、啓友エステートの社員が毎月訪問することで実施する。管理費は、あえて訪問時に手渡しで受け取ることとした。上山登子社長は「見守りのための訪問を、生活への干渉と感じて嫌がる人もいる。あえて管理費を直接回収することで、確実に入居者を見守る」と話す。

 運営にあたっては、補助金を活用する。申請したのは、国土交通省の「みんなが安心して住まいを提供できる環境整備モデル事業《サブリース型》」。要配慮者への住宅提供を行う居住支援法人や社会福祉法人が申請できるもので、事業に必要な人件費などに対して最大年間300万円の補助が出る。収支について上山社長は「サブリースした居室が常に満室になるとは限らず、家賃債務保証の審査が通らない入居者も多いので滞納リスクもある」と慎重に考えているという。

 同事業を行うのは、同社が支援する要配慮者の住居確保と、居住サポート住宅の登録・運営ノウハウ蓄積のためだ。「当社が支援する人は、アパートからの立ち退き期限が迫っている場合も多い。そうした人たちの住まいを確保しながら、制度の活用の仕方を模索していく」(上山社長)

たけのこハウス、市が住まい相談事業を委託

 要配慮者の賃貸仲介を行うたけのこハウスは、尼崎市から住まいに関する相談の受け付け業務を受託している。受託業務の所管は住宅局ではなく、生活困窮者の支援を担当する福祉局。行政の福祉領域で、民間の賃貸仲介や管理の知見が求められている。

 たけのこハウスと訪問看護事業者、社会福祉士事業所は24年6月、3社によるコンソーシアム「エンパワーメント・リンク尼崎」を立ち上げた。25年7月に、コンソーシアムで尼崎市から住まい相談支援業務と地域居住支援業務を受託している。

 たけのこハウスは二つの業務のうち、住まい相談支援業務を担当する。尼崎市が市内2カ所に設置する「しごと・くらしサポートセンター尼崎」に2カ所合わせて週5日常駐している。

 相談者の経済状況や健康状態、引っ越し先に関する希望などをヒアリング。不動産事業者や高齢者施設に問い合わせを行い、相談者の住まいを探す。

たけのこハウス

 25年度は7月から11月末までに49件の相談を受け付けた。そのうち19件で、民間賃貸住宅や公営住宅、高齢者施設などへの入居・入所を決めている。賃貸仲介はたけのこハウスではなく、市内の協力不動産会社が行う。

 たけのこハウスは事業受託前から年200件ほどの要配慮者からの相談を受け付け、入居を支援してきた。高齢者はもちろん、精神障がい者や家賃滞納歴のある生活困窮者らの入居を決めた実績も豊富だ。

 竹下雄貴社長は「相談者の背景を深く聞くと、どんな物件なら入居が可能かわかってくる。ポイントは家賃帯や家賃債務保証会社。どんな物件を探しているかというイメージを持ったうえで、市内の協力不動産会社に問い合わせを行っている」と話す。

 業務委託の背景には、25年4月の改正生活困窮者自立支援法の施行がある。同法は生活保護受給に至る前や脱却段階の人たちへの支援について定めたものだ。従来は就労や生活に関する支援が制度の中心となっていたが、改正法では住居に関わる支援が強化された。尼崎市はこれを受けて、25年度から住まい相談支援事業を開始することを決めた。

 尼崎市福祉局南部福祉相談支援課の担当者は「しごと・くらしサポートセンターを運営する福祉担当の職員は、住まいに関する相談対応の経験が少なく、不動産会社に部屋探しを依頼して対応を終えていた。センター内に住まい専門の窓口ができたことで部屋探しの経過や結果が見え、入居後の支援についても考えることができるようになっている」とコメントした。

(中村)
(2026年4月13日20面に掲載)

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