不動産会社のAI(人工知能)活用の取り組みにおいて、導入から実際の施策、目指す方向までを紹介する連載第4弾。アンビションDXホールディングスは、業務ごとにAIサービスを自社開発し生産性を向上。契約書の確認業務は8割近くの削減効果を上げる。
全社DXを加速
各部署に担当者
アンビションDXホールディングスは、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の中核にAIを位置づけ、業務効率化とサービス品質の向上を進めている。
生成AI「Chat(チャット)GPT」の登場以降、社内でのAI活用を加速させ、契約書類の確認業務などで大幅な工数削減を実現した。
同社のAI活用の特徴は、単なるツールの導入にとどまらず、全社員のリテラシー向上を前提とした組織的な推進体制にある。最終確認は人間が担う「ヒューマン・イン・ザ・ループ」の考え方を採用。AIと人間が補完し合う業務フローの構築を目指す。
具体的な成果としては、賃賃借契約書などのチェックツールの開発が挙げられる。従来、人手で行っていた確認作業の約80%を削減。通常期は月40時間、繁忙期は月67時間の業務負荷が軽減されている。
同社がAI活用に本格的に着手したのは、ChatGPTが公開された2022年末以降だ。一方で、学習モデルを基に予測を行うAIの研究は、17〜18年ごろから情報システム部で開始。21年10月のDX推進室設立時にも、将来的なAI活用を見据えて戦略に組み込んでいた。
現在は、AIエージェントとRAG(検索拡張生成)の活用により、入居者や仲介会社からの問い合わせ対応や、請求書、契約書のチェックなどを自動化している。契約書チェックツールは、DX推進室が社内提案を基に開発したもので、実務への貢献度が高いという。
契約書の不備をAIが判別
社内浸透に向けては「AI推進委員会」を設置し、月2回会議を実施する。各部署から選出された51人の「AIアンバサダー」が、部署内での知識共有や実務アイデアの創出を担う体制だ。全従業員約400人のうち、現在はAIの日常的な利用が48%、時々の利用が35%にとどまる。
月1回の研修と月2回のAI推進委員会を通じてリテラシー向上を図り、将来的には全社員が日常的に活用できる環境の整備を目指す。
音声データ利用
今後の重点施策として、不動産業界特有の専門用語に対応した音声AIの開発と、業務フロー全体を担う「AIエージェント」の構築を掲げる。音声AIでは、同社が保有する音声データを活用し、専門用語の認識精度向上を図る。また、単機能の小規模AIを多数開発し、相互に連携させることで複雑な業務を自動化する構想も進めている。
DX推進室の中村勇介室長は「すべてにAI活用の余地がある」と断言する。「何十万時間の音声データが当社にあり、それをAIでファインチューニング(追加学習)している。これを基に当社独自の音声AIを作ったり、社員のAIクローンを作ったりしている。それらが実現すれば、24時間365日、エンドユーザーは部屋探しができるようになる。お客さんとの接点も大きく変わる」(中村室長)。
社員のAIクローンを開発
同社はAIを単なる受付窓口ではなく、課題解決まで担う存在と定義する。入居者からの水漏れなどの緊急連絡に対し、AIが状況を聞き取り、データベースを基に適切な事業者を選定して連絡する仕組みの構築を検討。賃貸仲介業務では、申し込みプロセスの効率化が期待される。
客付けの仲介会社といった取引先に対する書類不備の確認や督促といった業務を、AIが補完することもできるとみる。社員は付加価値の高い業務に注力しやすくなる見通しだ。
(2026年4月6日9面に掲載)





