不動産会社のAI活用において、導入から実際の施策、目指す方向までを紹介する連載第6弾。ユーミーClass(神奈川県藤沢市)は売り上げや利益向上のためのAI活用戦略を進める。生成AIによるロールプレーイングを実施。新人社員であってもオーナーへの提案が通る効果が上がる。
利益・売上伸ばす活用重視
必須研修を実施
グループで2万5000戸超を管理するユーミーClassは業務削減よりも、売り上げや利益を向上するためのAI活用を重視する。営業力の強化と業務の属人化解消を主要な目的とし、若手社員の実績向上など、効果が表れている。
2024年10月に「スマートテクノロジー推進室」を新設し、AIの業務活用を本格的に開始した。社内浸透に向けては、全社員を対象にAIリテラシーの必須研修を実施し、参加できない場合には録画を共有する。AI導入を一部部署の試みにとどめず、グループ全体のDX戦略として位置付けている。グループウェアをマイクロソフト製品へ移行。セキュリティーを確保しつつ、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)との連携を見据え判断した。
新卒向け勉強会では生成AI「NotebookLM」を活用したナレッジ共有基盤を構築。スマートテクノロジー推進室の菊池美穂課長は「勉強会を通じた新卒のメンバーがアイデアを出し、社内コンテストやグループ内コンテストで優勝する成果を上げた」と話す。現在はこれを生成AIの業務アシスタント「Copilot」環境へ移行し、全社横断で活用できる体制づくりを進めている。
同社が現在、実務において注力しているのが「AIロープレ」だ。生成AI「ChatGPT」の有料版を活用し、さまざまな顧客層を想定したテキストベースの営業ロールプレーイングを実施している。音声形式では応答精度が低下する傾向があるため、トレーニングはテキスト形式に限定した。
テキストでのAIロープレを実施
その結果、導入から2カ月で、経験の浅い若手社員による既存顧客向けキャッシュフロー診断の受託件数が増加した。不動産知識が十分でないスタッフに対しては、業界特化型のAIツールも併用し、知識面の補完と提案力の向上を図る。
音声データ化へ
今後の展開として、AIロープレの対象を大規模修繕や物件の売却・建て替え提案など、より高度な業務へ拡大する計画だ。結果、売り上げや利益率の高い案件の獲得増加につなげられるとみる。
音声認識の精度が安定すれば、音声によるロープレへの移行も検討している。加えて、営業担当者の活動報告を音声入力へ切り替える準備も進めている。面談後、社用のスマートフォンやノートパソコンから入力することで、多い担当者で1日2時間程度かかっていた作業を5分の1程度に短縮できると見込む。
「顧客の家族関係といった詳細な情報を漏れなくデータ化し、AIに学習させる。対話でしか得られない、オーナーの潜在的な要望をくみ取るような情報を会社の資産として生かせるようになることが重要」
キャッシュフロー診断書作成時のAI―OCR(AIを用いた光学式文字読み取り装置)導入や、経理などのバックヤード業務のRPA化による自動化も計画している。
同社がAI活用で目指すのは、従業員が顧客との対話や思考に時間を割ける体制の確立である。定型業務をAIやRPAで代替し、人にしかできないコミュニケーションへ資源を再配分する。日常対話から得られる細かな情報をデータとして蓄積・分析することで、競合との差別化を図り、持続的な成長につなげる。
(2026年4月20日7面に掲載)





