講演者
深野商事
深野弘之 社長
住人の交流生む築古リノベ
地域に付加価値 賃料アップ実現
築古物件をリノベーションして飲食店やコワーキングスペースとし、賃料アップを実現した。敷地全体を使ってのブランディングに取り組んだ結果だと考える。
敷地は、東京都豊島区、池袋駅の西口方面にあり、立地はかなり恵まれている。総面積は3000㎡ほど。その中に、14階建て全83世帯のマンションを軸とした5棟の建物を所有している。当初は4棟で、建物同士個々で運営していたが、この一帯をひとつのエリアとしてブランディングしていくという発想が生まれ、それこそが周辺地域との差別化につながると考えた。周辺との差別化を図るためには、地域に付加価値を付けていくことが必要になる。このエリアを「ニシイケバレイ」と名付けて2020年7月に開業した。
都心は、誰が隣に住んでいるかわからないという人も多い。同エリアの周辺も、かつてはここで生まれ育った人たちがいたが、現在は皆が高齢化し、街にルーツを持つ人が減った。この街を次世代に引き継いでいくのか。自分が人の親として考えたとき、やはり隣の人の顔が見えるような豊かな関係性にあふれる街を緩やかに築いて、残していきたい。そんな街を、そのような風景を、自分が持つ敷地の中に再現したい。そう思い、このエリアを再構築していこうと動き出した。
まず取り組んだのは、建物の1階を開放したことだ。1階は公共空間でもあるので、今まで閉じていたところや住居として使用していたところを、店舗にしたり、飲食店にしたりと開いた形にして、そこに住む人や、訪れる人同士のかかわりができる場にした。
その他の部屋については、建物ごとにリノベし、自宅兼オフィスとしても利用できるSOHO物件にしたり、コワーキングスペースやシェアキッチンにしたりした。さらにはパルクールというスポーツのジムにしたりするなど、いろいろな仕掛けをしている。
これに伴い賃料も増加しており、例えば築38年ほどになる4階建て全12世帯の建物では、住居のときは40㎡の部屋が11万円台ぐらいだったところ、5万円前後のアップとなった。また築55年の木造2階建てのアパートも、21年にフルリノベした。それまで1部屋5万円程度で貸して1カ月あたり35万〜45万円ぐらいの家賃収入だったのが、現在は総額60万円ぐらいになっている。
明るい街づくり 次世代に継承
街の風景を変える施策として、不要な板塀やフェンスを取り払って明るく開けたイメージをつくったり、敷地内にベンチをいくつも置いたりと手を入れていった。
今では縁日や茶道、ヨガ、麻雀などの教室、ライブ、さまざまな季節のイベントなどをエリア内で開催し、とにかく面白そうなこと、思い付いたことをみんなで話し合い、いろいろやっている。住人同士や管理人とのコミュニケーションも増え、クレームも出にくくなり、何か問題があってもすぐに対処できるようになってきた。
世の中が変わっていく中で、少しでもいい形で次の世代にバトンを渡したいという思いで大家業に取り組んできた。これからも、皆が緩やかに支え合える関係性というものを、こつこつとつくっていきたいと思う。
(2026年4月27日18面に掲載)





