3月から留学や就業目的での入国制限が大幅に緩和され、外国人の賃貸仲介が活況となっている。日本での就職や留学が決まっていたものの入国待ちとなっていた外国人が次々に入国し、契約が急増した不動産会社はうれしい悲鳴を上げる。需要回復は大都市にとどまらず、観光業復活に向け人材獲得を狙う地方でも増加しているようだ。
訪日外国人数は2021年の年間約35万人を22年5月末時点で超えた。7月末時点で累計約82万人と、すでに21年比2倍超となっている。
留学・就労とも復調傾向
新型コロナウイルス感染拡大防止のための入国制限が緩和され、6月10日には約2年ぶりに観光目的の入国者受け入れを再開。外国人向けの賃貸仲介も回復しつつある。
海外から月500件反響 日本語学校に変化
外国人専門の家賃債務保証、賃貸仲介、生活支援などを手がけるグローバルトラストネットワークス(以下、GTN:東京都豊島区)の後藤裕幸社長は「留学生の受け入れが再開した3月以降、海外から月に500件を超える賃貸仲介の問い合わせが来ている」と話す。
同社の家賃債務保証事業・賃貸仲介事業の顧客の6割強は留学生だ。
3月の留学生の受け入れ再開を受け、家賃債務保証・賃貸仲介の契約ともに急増。3~7月の家賃債務保証の新規契約件数は21年の同期間比2倍超で推移している。後藤社長は「8月は例年、引っ越しが少ないため契約数は谷間となるが、今年は契約件数が全く落ちていない」と話す。
背景には、日本語学校の受け入れ態勢の変化がある。日本語学校は、通常4月と7月のみ入学者を受け入れていた。だが、コロナ下で入国待ちをしていた留学生を受け入れるため、随時入学を許可しているのだという。そのため、来日する留学生数のばらつきがなくなり、契約件数も高水準で推移している。「入国できなかった留学生が順次入国している。今は留学目的の入国がピーク」と後藤社長は説明する。
ビジネス需要復活 稼働率8割台
一方、就労目的の契約も増えているようだ。外国人向けのサービスアパートメント事業を主力にするエンプラス(東京都中央区)でも契約数は増加傾向にある。同社は、都心を中心に約200室のサービスアパートメントを運営する。
同社の顧客の多くが、外国人従業員を受け入れる法人だ。3月半ば以降、顧客企業からの問い合わせは21年同月比で約2倍に増えた。顧客企業で、採用したものの入国できず、本国で待機させていた外国人の入居が始まったからだ。
同社では21年、五輪特需を除き、運営する物件の賃料を大きく値下げし日本人向けに集客を行った。これにより何とか稼働率を上げていた。それでも五輪期間中以外は通常の半分程度の稼働率だったが、「現在では元の価格のまま、稼働率が8割まで回復している」とジャン・ファクェン執行役員は述べる。
同じくGTNでは、沖縄、北海道などで外国人労働者の入居希望が増加している。
コロナ禍により観光業や飲食業に従事していた外国人労働者が離職。現在、回復を見越して観光業や飲食業が採用を強化しており、地方物件への入居者は観光業などに従事する目的の外国人だという。「今後、経済が回復するにつれ、特に観光業や飲食業は深刻な人手不足に陥る。賃貸住宅需要はそれに付随して、さらに需要が回復していくだろう」(後藤社長)
ポータル掲載前向き PV数2.5倍
日本エイジェント(愛媛県松山市)が運営する外国人向け住宅ポータルサイト「wagaya japan(ワガヤジャパン)」でも、日本で住まい探しをする外国人の需要に伴い、PV(閲覧回数)数が急伸。22年1~7月は286万PVと、21年同時期の108万PVの約2.5倍超となった。3月以降、掲載に前向きな企業が増加しているという。
(2022年8月22日1面に掲載)