石川県で賃貸管理を行う志乃丘商事(石川県小松市)は、公営住宅の受託や高齢入居者の受け入れに商機を見いだす。管理する賃貸住宅3000戸のうち、公営住宅は半数以上の1800戸だ。公営住宅の管理を通じて高齢入居者の対応ノウハウを蓄え、住宅確保要配慮者(以下、要配慮者)の受け入れも強化。自治体や福祉事業者とも連携を深め、人口減少地域で生き残りを図る。
3000戸中1800戸が市営
民間ノウハウ提供 石川の4市で受託
志乃丘商事は、公営住宅管理の受託を推進することで管理戸数を伸ばしてきた。受託するのは石川県小松市・加賀市・能美市・白山市の四つの市の公営住宅。2012年に白山市の市営住宅を受託して以来、着実に受託戸数を増やし、26年4月にも能美市で約300戸を新規受託した。8月からは加賀市で約300戸を受託することが決まっている。
小松市の新築市営住宅
指定管理者として、主に入居者からのクレーム対応、家賃集金のサポートや建物の修繕、火災報知器などの定期点検を行う。受託するすべての市で、公共・民間の病院などの施設のビルメンテナンスを行う事業者と設立した共同企業体(JV)で管理を行う。現場対応を建物管理事業者に任せることで、社員数が少ない中でも4市の公営住宅を管理できている。
篠岡沁一郎社長は「小松市は法人製造業に勤務する従業員は多いが、大手企業の従業員や学生などの目立った賃貸住宅需要が見られないエリア。一方で競合は少なくない。差別化戦略として、大手が参入しない公営住宅の管理に注目した」と話す。
指定管理者として選定されるために、民間ならではの提案を行ってきた。具体的には、入居者からの問い合わせを受けるコールセンターの活用や家賃債務保証、高齢者向け見守りサービスの導入などだ。公営住宅では家賃債務保証を使うケースが少なく、志乃丘商事の導入が石川県では第1号だったという。
公営住宅の管理を受託して14年となり、自治体からの信頼も厚い。26年6月に入居開始となる小松市の新築公営住宅は、市から入居対策に関する相談があったという。
「すべての人が安心・安全な住居を」
要配慮者受け入れ 自治体・福祉と連携
公営住宅管理の経験を生かして注力するのが、高齢者をはじめとした要配慮者の入居受け入れだ。公営住宅の入居者の高齢者割合は6割に上る。同社では特に、万が一の死亡時の残置物処理・原状回復をスムーズに行うための対策を重ねてきた。
基本となるのは、保険・家賃債務保証(以下、保証)の使い分けだ。高齢者の入居時には、残置物処理や特殊清掃の費用が多く出る保証を利用する。
単身高齢者の家財保険については、SBI日本少額短期保険、全管協少額短期保険を採用している。公営住宅ではスターツ少額短期保険の商品を活用する。スターツ少額短期保険の商品は、篠岡社長が交渉して、最低限の補償で保険料が低額となるプランをつくってもらったという。
さらに同社は、高齢入居者との死後事務委任契約の締結に取り組む。死後事務委任契約は、自分の死後に発生する葬儀や埋葬などの手続きを委任する契約だ。国土交通省は、単身高齢入居者が自身の死亡時の残置物処理を親族や管理会社に委ねる、死後事務委任契約のひな型を公開している。志乃丘商事では国交省のひな型をベースにした死後事務委任契約書を作成し、65歳以上の高齢者の入居時には原則契約してもらうこととしている。
志乃丘商事の外観。要配慮者入居の強みをアピールする
「入居者が亡くなった後の空室期間が長くなると、オーナーの負担が大きい。万が一孤独死が発生してもスムーズに原状回復を行い、次の募集ができる体制を整えることで、オーナーも高齢者入居を積極的に受け入れてくれる」
志乃丘商事は、自治体や福祉と連携してさらに要配慮者入居に注力していく。20年には石川県から居住支援法人の指定を受け、自治体などから入居希望の要配慮者の紹介を受けられる体制をつくってきた。26年5月には、県内の居住支援法人や社会福祉協議会、自治体と共に石川県居住支援連絡会を設立。篠岡社長が同会の副会長に就いた。
今後は同連絡会を通して福祉事業者との連携を深めるほか、公営住宅を含む要配慮者受け入れ可能物件のネットワークづくりにも取り組んでいく構えだ。
「現状、要配慮者が入居できる物件が、要配慮者の部屋探しをサポートする事業者にうまく届いていないと感じている。石川県からマッチングの仕組みを整えて、すべての人が安心・安全に住める住居を提供していきたい」
(2026年6月22日28面に掲載)





