貸主や入居希望者への周知が課題
国交省は3月18日、IT重説の実用化に向けた検討会を開催した。
賃貸仲介においては、本格運用への前向きな意見が相次いだ。
昨年8月末から行っている社会実験で、2月末までに37社が187件のIT重説を実施した。
内訳は、個人への賃貸仲介が178件(うち海外が2件)、法人間の賃貸仲介が3件、法人間の売買仲介が2件だった。
実施事業者や利用者に行ったアンケートの回答結果を検証したところ、「対面と大差ない」と、両者ともおおむね肯定的だった。中川雅之日本大学経済学部教授は「ポジィティブな評価ができる」とコメントした。
IT重説を受けた相手方は、20代が4割と最も多く、30代~50代がそれぞれ2割程度。
「来店が不要であること」が活用動機の7割を占めた。
都道府県をまたいだ引っ越しが半数以上と考えられる。
使用端末機器はスマートフォンが6割、パソコンが3割。
全体の約3割で機材トラブルにより音声や画像に支障があったことを除けば、説明の分かりやすさや情報の伝達度合いは対面と大差ないようだ。
今後の利用意欲にもつながっている。
事業者側も同じ担当者がIT重説を行うことで、ノウハウが蓄積され、対面と同等の所要時間で説明できると実感している。
しかし、課題もある。
土田あつ子日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会消費者研究所主任研究員は、「2件にとどまった売買だけでなく、全体的に数が足りない。参加企業の追加公募を検討すべき。特に中堅老舗私企業の参加にしてほしい」と指摘した。
消費者や貸主への認知度を高める必要もある。
国交省では、全登録事業者にもアンケートを実施したが、有効回答数は7割の171社に留まった。
そのうちの2割にあたる30社が「IT重説を実施できる状況でない」と回答。
「使用するIT機器の準備ができていない」ことが主な理由に挙がった。
実施できる状況にありながら機会がなかった企業は、「顧客がIT重説を望まなかった」「売主・貸主から同意を取得できなかった」と理由を回答。
今後、賃貸の空室に関しては、事前に家主から同意書を得る取り組みを周知していく。
会中に検討委員会のメンバーが「最近、引っ越しをした。
登録事業者で契約をしたが、IT重説を提案されなかった」と漏らした。
現場社員への周知も事業者によって異なる。
国交省では引き続き、ポータルサイトやポスターなどで広報活動に注力する方針だ。