所有物件の一部を周辺住民も利用できるスペースに
所有物件を地域住民との交流の場にしたい・・・。
最近、所有物件に入居者の共用スペースだけでなく、地域住民も利用できるスペースもつくる家主が増えてきている。
シェアハウスをはじめ、コミュニティに注目が集まる今、建物内だけでなく、地域に開くことによる新しいコミュニティづくりに挑み始めている。
ゴールデンウィーク直前の祝日4月29日。
高級住宅地・東京都杉並区荻窪の新築賃貸住宅で内覧会が行われた。
「地域開放型シェアハウス的多世代賃貸住宅」という一風変わったコンセプトの賃貸住宅「荻窪家族レジデンス」の内覧会には、午前中だけの公開にもかかわらず、約50人が訪れた。
「いろいろな高齢者向けの施設もありますが、お年寄りだけに囲われたところよりも、子供も若者も犬も、自然な感じでそばにいてほしいと思いました」。
当日来訪者向けに開かれた説明会で、同建物のオーナー瑠璃川正子氏はこう話した。
約200坪の土地に建てられたRC造3階建ての建物は、賃貸住戸14戸とオーナー宅の計15戸が入っている。
最大の特徴は、「地域開放型」とうたっているように、建物の一部を「まちに開いた」点だ。
具体的には、1階にある集会室とアトリエとラウンジが入居者以外の人でも利用できるスペースとなっている。
こうしたスペースの入居者以外の利用は「百人力サロン」のメンバーとして会費を支払えば可能だ。
「この建物は計画段階からワークショップを重ねながらいろいろな人と一緒に作りましたが、未完です。今後、これから住む方たちで作りあげていきたいですね」と同建物の設計を担当した連健夫氏は語った。
「まちに開く」賃貸住宅はさらに大きく発展している。
「カスタマイズ賃貸」の第一人者であり、都電家守舎(東京都豊島区)の代表を務めるメゾン青樹の青木純氏は、所有物件ロイヤルアネックス2階に飲食店「都電テーブル」をこのほどオープンした。
「『まちのもう一つの食卓』をコンセプトとしました」(青木氏)というように同店は、入居者はもちろん仕事帰りのサラリーマンや近所の住民、地元の主婦が気軽に入れるような食堂だ。
メニューも東京・早稲田にある「こだわり商店」から仕入れた、生産者の顔が見える食材によるオリジナル料理を提供している。
「大家は街の採用担当」と語る青木氏は、これまで生活デザイン力がある入居者の獲得による街の活性化を図ってきた。
今回は半年ほど前にテナントが退去したオフィスを改装し、飲食事業を行うことで、まさに雇用を生んでいる。
少子高齢化による人口減、空室増加は業界の課題だ。
その問題などに立ち向かうためには所有物件だけでなく、地域活性にこそ、建物価値を高める鍵はあるようだ。