差別解消法の浸透に課題
法律・制度改正|2016年07月15日
家主の無理解 根強く
今年4月に障害者差別の撤廃を目的として施行された障害者差別解消法だが、賃貸業界での普及について疑問の声が挙がっている。
バリアフリー企画を行うミライロ(大阪市)の垣内俊哉社長は「空室であることを確認し、内見も終えていたのに、車椅子を使用していることを伝えた途端に断られた」と自身の体験を振り返る。
同法は行政やサービス提供者が障害者に差別的な扱いをすることを禁じたもの。
国土交通省が不動産業界での差別撤廃のために作成した行動指針では不動産仲介会社を例に挙げ、障害を理由に紹介する物件の数を制限することを禁止している。
だが、垣内社長によると不動産仲介の現場で差別的な扱いを受けることは今も少なくないという。
「不動産仲介会社は日常的に障害者と接する機会が少ないので、どんな対応をするべきか慣れていないだけ。障害者でも一人で日常生活を送れる者もいる。それぞれの生活様式を理解して、家主に紹介してもらいたい」と理解を訴えた。
賃貸業界での障害者差別が残る原因として、家主が入居を断っている実態が挙げられる。
京都市の仲介会社社員は「軽度の障害ならば家主には隠した方がいい。
ばれたら入居を拒否されて紹介できなくなる」と話す。
国交省は同法の普及に向けて公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(東京都千代田区)らと連携し啓発活動を行っているが、業界での認知については「不十分である」との認識を示している。
今後は不動産会社だけでなく家主に向けて同法の周知と差別撤廃を訴えていく。