不動産会社のAI(人工知能)活用の取り組みにおいて、導入から実際の施策、目指す方向までを紹介する連載第1弾。賃貸住宅の開発・管理を行う協和開発がAI活用にあたり重視するのは、業務自体の最適化とデータの分類・集約だ。
自動化より設計重視
補助や補完の役割
協和開発は、判断の補助や専門知識の補完など、人の意思決定を支えるAI活用の方針を掲げる。同社における生成AI活用の特徴は、自動化ありきではなく、まず業務フローをシンプルにすることを前提としている点にある。
三谷洋介社長は「力技での自動化は根本解決にならない」と語る。過去にロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)を導入したものの実用に至らなかった。その経験から、業務フローそのものを見直す必要性を強く認識したという。対応スピードの向上や属人性の低下といった効果が表れている。
本格的なAI活用を始めたのは2023年ごろで、対話型AI「Chat(チャット)GPT-3」の登場が契機となった。当初は試験的な利用にとどまっていたが、業務への適用可能性が見え始めたことから、段階的に活用範囲を広げてきた。
チラシ、外国語に翻訳
現在、生成AIは主に四つの業務で活用する。一つ目の外国人入居者対応では、ベトナム語やクメール語、英語などへの翻訳にAIを用い、ごみ出しルールや注意喚起文書を迅速に作成。
二つ目のトラブル対応では、設備写真を基にPCB(ポリ塩化ビフェニル)含有の可能性や修理要否の判断材料として活用するほか、騒音など入居者間トラブルにおいても、穏便な解決に向けた文面や対応方針の検討にAIを用いる。
三つ目の自社の基幹システム開発では、設計相談やコード生成にChatGPTを利用。四つ目のオーナーへの提案業務では「地方銀行の融資担当者」という役割をAIに与え、融資可否の想定を行うことで提案精度を高めている。
こうした取り組みにより、業務時間の短縮と判断の質の向上が確認されている。システム開発においては、勤怠データのCSV変換プログラムをAIにコーディングさせた。従来半日程度を要していたが、AI活用により約30分で作成できたという。
「翻訳や文面作成の補助によって、外国人入居者対応や対人トラブル対応に伴う従業員の心理的負担の軽減にもつながっている」と三谷社長は話す。社内浸透にあたっては、全社研修や詳細なマニュアル整備は行っていない。日常業務の中で生じる疑問や課題をAIに相談しながら使い方を模索する。
Google Workspaceを利用していることから、セキュリティー面では「Gemini(ジェミニ)」の利用を推奨。入力データが学習されない設定であればChatGPTの利用も認めるなど、柔軟な運用を行っている。
データ分類し集約
今後は、過去のトラブル対応履歴などをデータベース化し、参照データとして活用する専用AIであるRAG(ラグ)の構築を検討している。新人スタッフでも過去事例に基づいた初期対応ができる体制を目指す。
「Notebook(ノートブック)LM」などを活用したオーナー向け提案資料の自動生成や、動画を用いた営業ツールの作成も視野に入れている。
「AI活用が経営に寄与するためには、自社のさまざまなデータをヒト・モノ・カネ・コトごとに集約化することが不可欠」と三谷社長は指摘する。同社ではAI導入以前から、請求書への「QRコード(2次元バーコード)」付与などを通じて、データをクラウド上に集約してきた。
AIの判断には限界があることを前提に、最終的な意思決定やシステム上の歯止めは人が担う必要があるとする。今後は、不動産ポータルサイトにおける検索のAI化も見据え、AIが読み取りやすい情報構造への最適化が重要になるとみている。
(2026年3月9日5面に掲載)





