内部告発から1年以上放置
レオパレス21(東京都中野区)に続き、大和ハウス工業(大阪市)でも賃貸住宅の施工不備が発覚した。同社が設計、建築した戸建てと賃貸住宅2078棟が、国土交通省の型式適合認定を受けた仕様に適合していなかった。そのうち半数以上の1190棟が賃貸住宅だ。2016年12月に社内通報制度によって事態を把握していたにもかかわらず、調査開始まで1年以上放置していた実態が明らかになった。相次ぐ大手建築会社の不祥事に、オーナーや入居者に不安が広がっている。
今回発覚した不備は大きく2つある。1つ目は賃貸住宅200棟で見つかった防火性能に関する不備だ。01年1月31日から10年6月30日までに6都県で引き渡した建物だ。2階外部の廊下を支えるL字形の受柱が、標準仕様と異なる施工だった。うち73棟は防火安全性が不十分な状況だ。建築基準法・消防法および関係条例の防火基準を満たしていない可能性がある。
2つ目は独立基礎の仕様の不適合だ。建物の基礎構造の一部に用いている独立基礎が型式適合認定を受けた仕様に適合していなかった。対象は00年10月5日から13年2月28日までに引き渡した戸建て888棟と賃貸住宅990棟の合計1878棟だ。
型式適合認定を受けて建物を建てる場合は、建築確認時の審査が簡略化される。ただ建築する建物の設計内容は認定を受けた内容に合致しなければならない。今回の不備は、認定を受けた仕様ではなかったことに問題がある。
原因について同社は、設計者が型式適合認定を受けた仕様を十分確認していなかったと説明している。6月末までに第三者機関を通じて対象となるすべての建物の構造を確認した上で、7月までに詳しい原因や再発防止策を公表する予定だ。今後、オーナーや入居者には個別に連絡、訪問し説明をしていくという。早急に改修が必要なのは、防火安全性が不十分と思われる73棟だ。4月末までに特定行政庁の指導を受け改修工事完了を目指す。総額費用は1億円を見込んでいる。工事のために入居者が退去する必要などはない。残りの建物は認定を受けた仕様ではないものの、同社によると現段階の調査では、建築基準法は満たしているようだ。所有者が要望すれば改修に応じる。
内部告発から本格調査まで1年以上かかった。その理由に対して同社は、「対象棟数が多いことと、ガバナンスが十分でなかったこと」と述べた。
同社は過去にも戸建てや賃貸住宅において施工不備が発覚している。14年12月、15年10月には戸建て賃貸住宅で防火シャッター雨戸と防火ドアなどで不適合施工があった。16年10月には賃貸住宅などで小屋裏界壁パネルが国の認定仕様に不適合だった。その際に講じた再発防止策は、社長直轄の『仕様監理部』の新設だ。安全性能に直結する技術情報の伝達を監理する部署で、関連部門の管制を図り、不適合を未然に防止してきたというが、その役割は十分ではなかったようだ。
国交省は家主への説明や相談窓口の設置を同社に指示した。また3月末から年間1000戸以上を供給する大手アパート建築会社に対して、建築プロセスや工事監理の実態調査を行っている。
一般社団法人埼玉県資産経営協会(さいたま市)の高木富夫事務局長は「レオパレスのようなオーナー企業だけでなく、国内トップクラスの建設会社である大和ハウス工業の施工不備に驚きを隠せない。会員のオーナーも他の大手ハウスメーカーに不信感を抱いてしまっている」と語った。2階外部の廊下を支える受柱が標準仕様と異なっていた件について、「目視で不適合だと容易に分かる。強度が低く同時に複数人が廊下に出ると危険なことは一目瞭然だ」と指摘する。