東日本大震災から10年がたとうとしている。全国で住宅39万4487棟が全壊もしくは半壊の被害を受け、賃貸住宅市場にも大きな影響を与えた。震災直後は被災者や復興工事の作業員向けの賃貸住宅需要が増加し、被災地は深刻な物件不足に陥った。だが、現在では需要は落ち着き、むしろ近年は空室が増加している。影響を大きく受けた事業者に現状を聞いた。
入居率9割下回る
「この10年は入居率の乱高下が激しかった」と振り返るのは、約1200戸を管理するリブシティ(福島県郡山市)の熊田春夫社長だ。入居率が郡山市内の平均よりやや高い90%台前半で推移していたが、震災後は原子力発電所事故の不安で他県からの学生の流入が減り、1K物件の入居率は6、7割まで下がった。数カ月たつと、みなし仮設住宅や除染の作業員による需要増加によって、入居率は反転。ピークの2013年には97%となり、賃料は震災前から最大1割アップした。