「貸せる部屋ない」コロナ下で変わる郊外住み替え需要急増~前編~

ふるさと回帰支援センター, シー・エフ・ネッツ, 太平洋不動産, リクルート住まいカンパニー

企業|2021年08月09日

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 新型コロナウイルス下においてテレワークの導入が進む中、不動産ビジネスにどのような影響を与えるのかを探る特集第2弾。通勤の機会が減少したことから郊外への住み替えのニーズが高まっているのかを現場の声から検証する。本紙4月12日号では地方への移住を特集したが、今号では東京23区外、神奈川、千葉、茨城、埼玉の不動産会社に取材し、郊外地域における不動産会社の商機を探った。

ふるさと回帰支援センター、東京郊外でも好みに違い コスト重視の千葉派

 移住希望者の相談を受け、各自治体の紹介や移住セミナーの開催をしている特定非営利活動法人100万人のふるさと回帰・循環運動推進・支援センター(東京都千代田区)の相談部門の三浦茜相談員は都心部から郊外への住み替えニーズについて「県ごとに移住する人の性格が違うと思う。特に茨城はそれなりに収入があり、学力の高い層が移住している。反対に千葉はコストダウンしたい人が移住している」と傾向を話す。

 特に茨城県内はほぼ、つくばエクスプレス(以下、TX)沿線への住み替えが集中している。神奈川については、2020年6月~11月、21年2月~3月には非常に相談の伸びは良かったが、最近ではほぼ茨城県の独り勝ちというほど同法人への相談件数が増えている。

 「神奈川、茨城の両県ともコロナ禍前と比べて相談件数が約2倍に伸びている。中でも小田原市は今後伸びていくと予想している」と三浦相談員はコメントする。

 反対に千葉においては木更津市への相談が増えているという。そのほか、富津や君津など、房総半島の南に行くほど人気があり、自家用車を利用して東京へ通勤できる事業主や社長などからの相談が目立った。「在宅勤務で週1日程度の出社なら、遠くても電車で座って出勤できることもあり人気が出ている。東京へ通勤する場合は木更津、二拠点居住の場合は南房総やいすみに人気がある」(三浦相談員)

 埼玉に関しては引っ越しに近い感覚で安い家賃を求めるニーズが高いと同法人では推測するが、相談実績が少ないこともあり、現状が把握できていないという。「ただ、伸び悩んでいる印象はある。しいて言えば、小川町やJR高崎線沿線は増えていると思う」と三浦相談員はコメントした。

 

シー・エフ・ネッツ、横須賀市の住宅が人気 実需向けが2割高

 約7000戸を管理するシー・エフ・ネッツ(神奈川県鎌倉市)ではコロナ下で神奈川県郊外エリアの管理物件の稼働率が都心部並みに上昇し、反対に都心部においては空室が増えた。

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横須賀の街並

 横須賀市や相模原市の空室率が高い地域でも満室が増え、コロナ禍以前は7~8%だった空室率が4~5%に下がった。

 一方、都内においては空室率が3%程度であったのがコロナ禍以降7%にまで落ち込んだが、5月には4%にまで回復しているという。

 20年の7~8月ごろに、横浜市の戸塚や相模原市への物件への問い合わせが増えた。平均家賃が3万5000円程度の座間、相模原、三浦のあたりのような郊外においても例年空室率は7~8%だったのがほとんど満室になった。

 都心以外にも横浜や川崎など人口の多い地域からの流入もあったようだ。

 平均家賃が6万~7万円の鎌倉では例年空室率が5~6%、5万~6万円程度の横須賀では例年7~8%だったが、鎌倉や横須賀でも夏から徐々に稼働率は上がり、年末から繁忙期にかけては空室がほとんどない状態だったという。現在は3~4%程度に落ち着いている。横浜や川﨑地域に関しては例年どおりの動きだった。同社で扱っている物件が単身向けのワンルームもしくは1Kが中心だということもあり、間取りのニーズに変化はなかった。

 ファミリー層に関しては賃貸よりも売買の方で動きがあった。

 賃貸物件における解約で住宅購入を理由に挙げる件数が20年の年末から21年の繁忙期にかけて増加した。

 その影響からか20年の夏ごろから売買物件の値段も上がっており、新築の戸建てで鎌倉だとコロナ禍前より1割以上、横須賀で2割以上高騰している地域もあるという。プロパティマネジメント事業部の小川哲平マネージャーは「コロナ禍の影響で年収が下がるため、20年の源泉徴収で住宅ローンを組みたいのでは。また、高騰しても都心よりも安いので購入しやすい」と推測する。

 「コロナ下でテレワークが普及し、在宅ワークに向く仕事、向かない仕事がわかった。以前に比べてオフィス需要が減るのは確かだと思うが、人が集まったほうが効率がいいこともある。また、楽しいこともあるため小さな変化はあるかもしれないが、バランスは取れていくのでは」と小川マネージャーはコメントした。

 

太平洋不動産、問い合わせ件数4倍 物件が足りず相場高騰

 神奈川県の二宮町、大磯町をメーンに不動産の売買・仲介・管理などを行う太平洋不動産(神奈川県中郡)では、賃貸住宅の問い合わせ数が急増している。19年の月間問い合わせ件数は平均50件程度であったが、コロナの感染が拡大した20年5月には100件に倍増。以降、徐々に増えていたが、21年の1~2月には爆発的に増え、一カ月で200件もの問い合わせがあった。

 ニーズの急増に対し、住宅の数が限られていることもあり、20年度の賃貸物件の年間仲介件数は150件と微増に終わった。1月、2月に問い合わせが爆発的に増え、2月ごろには紹介できる物件がなくなった。

 人気があるのはオーシャンビューや見晴らしのよい、庭付きの開放感のある物件だ。同社の宮戸淳店長は「コロナ下で、出社の必要性がなくなり、郊外へ住み替えする人は増えているが、葉山、鎌倉は家賃が高く、茅ヶ崎、藤沢はサーファー文化があり人で混雑している。そういった雰囲気を避けて、穏やかでのんびりしていながら田舎過ぎるわけでなく都心にも通いやすい土地を好む人が二宮、大磯に来ているのだと思う」と推測する。

 住み替え層にも変化があった。今まではファミリーの住み替えが多かったが、30~40代の単身もしくはDinksの住み替えが増加した。「子どもがいると、学区の問題があり、引っ越ししづらいのでは」(宮戸店長)。テレワークを機に引っ越しをした顧客は全体の7~8割を占める。

 一方で部屋のニーズの変化は多くなく、以前から引き続き、広い部屋への需要が高い。2LDKや3DKが人気で、3LDKともなるとすぐに決まるという。最近はガレージハウスやサーファーズハウス、庭付きなどのコンセプト物件への需要も高まっており、問い合わせも増えている。

 物件の供給が少ないため、今まで借り手がつかなかった物件の入居が決まったり、相場より賃料が高くても成約している。エリアの賃貸物件の家賃のボリュームゾーンは6万円。2LDKで7万円が平均だ。10万円を超えることはほとんどなく、あったとしても庭付きの戸建てだというがそれでもすぐ決まるという。売買物件に関しても海沿いの中古の物件が4000万円だったものが6000万円に上乗せされても売れており、相場が急騰している。「今まで東京に住んでいた人からすると、相場より高い物件でも安いと思われている。プチバブル状態が続いている」と宮戸店長は語る。

 

リクルート住まいカンパニー、住みたい街ランキング発表

埼玉県民の地元投票増加

 リクルート住まいカンパニー(東京都港区)が3月に発表した「SUUMO 住みたい街ランキング2021関東版」では、コロナ禍において住みたい街を変えた人が34%を占めた。中でも、夫婦や子どものいる世帯でその傾向が強まっており、「街にいる時間が長くなって、部屋が狭く感じたり、子どもを遊ばせる環境に困ったのがその世帯では」とSUUMO編集長の池本洋一氏は推測する。

ランキング表

 投票する街を変えた人は東京が31.6%、埼玉は41.8%で、投票シェアは東京は過去最低、神奈川、埼玉、千葉は過去最高となった。特に埼玉は伸び率が高く、「今まで東京に投票していた埼玉県民が埼玉に投票しだしたのでは」と池本編集長は推測する。

 1位にランクインしたのは横浜で、4年連続でトップに輝いた。すべての年代、すべてのライフステージにおいて1位と支持を得た。他都県からの投票も多く、1都4県すべてでトップ10に入る人気が続く。

 1位から7位は前年から変化がなかったが、21年のランキングで特徴的だったのはほぼすべての駅が得点を落としていることだ。「自分の住んでいる街に投票する人が増えたために得点が散ったのでは」と池本編集長は推測する。特に埼玉県民は今までは他県や東京都に投票する人が多かったが21年の投票においては54.5%が埼玉県内の駅に投票した。茨城県民にもその傾向があったが、埼玉で最もその傾向が出た。埼玉県は今回のランキングで4位に大宮が、8位に浦和、15位にさいたま新都心が入るほか、そのほかの和光市、川口、所沢も過去最高順位にランクインすると全体的に人気を上げてきた。

(8月9日4面・5面に掲載)

関連記事▶【「貸せる部屋ない」コロナ下で変わる郊外住み替え需要急増】[前編][中編][後編

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