信頼関係の破壊を判断する要素の一つ

【連載】新・法律エクスプレス 第16回

法律・制度|2021年11月26日

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 私は賃貸物件のオーナーとして住宅を賃貸していますが、最近入居者が「新型コロナウイルスの影響により収入が激減したため支払いたくても支払えない」と言い、賃料を滞納するようになりました。そこで、明け渡し訴訟によって退去を実現することを考えているのですが、「コロナ禍による収入の減少」という事情は裁判上どのように影響するのでしょうか?

新型コロナウイルスにおける立ち退き訴訟

 まず、前提として、不動産賃貸借契約の解除原因として賃料不払いといった債務不履行を主張する場合、その債務不履行が、契約当事者の信頼関係を破壊するものである必要があります(信頼関係破壊の法理) 裁判実務においては、3カ月分以上の賃料不払いがある場合には、通常は信頼関係が破壊されていると認められることが多いです。

 この点に関し、法務省は「新型コロナウイルス感染症の影響という特殊な要因で売り上げが減少したために賃料が払えなくなったという事情は、信頼関係が破壊されていないという方向に作用すると考えられます」「新型コロナウイルス感染症の影響により3カ月程度の賃料不払いが生じても、不払いの前後の状況などを踏まえ、信頼関係は破壊されていないと判断され、オーナーによる契約解除(立ち退き請求)が認められないケースも多いと考えられます」との見解を示しました(法務省民事局「賃貸借契約に関する民事上のルールを説明したQ&A」参照) そこで、実務における裁判所の判断傾向を説明するための参考として、当事務所が建物明け渡し請求訴訟の原告代理人として扱った判例を紹介します。

①コロナによる収入の減少という事実を認めるに足りる的確な証拠がなく、裁判当時、賃借人の賃料不払いは少なくとも7カ月に達し、賃貸借契約における信頼関係は破壊されたといわざるを得ないため、明け渡し認容。
②以前から、賃借人による賃料支払いの遅滞が常態化していたこと、およびこの裁判においても3カ月分の賃料を滞納していた事実が認められることからすると、コロナの影響により賃借人の経営する店舗の売り上げが減少したという事情があっても、信頼関係は破壊されていたといえるため、明け渡し認容。
③コロナの影響や、裁判の時点で相当額の滞納が解消されていることから、信頼関係の破壊については疑義が生じるとの裁判官の心証があり、結果的には滞納解消のうえで、居住継続の和解に帰着。

 以上を総合すると、賃料不払いがコロナ感染拡大の影響によるものでも、当然に契約解除が否定されるわけではなく、信頼関係破壊の有無を判断する際の考慮要素の一つにすぎないと判断されることが多いようです。

 したがって、賃借人が、コロナの影響を主張したとしても、通常どおり賃貸借契約の解除の手続きに移ることをおすすめします。

 

森田 雅也弁護士の写真

森田 雅也 弁護士

上智大学法科大学院卒業
2008年弁護士登録
2010年Authense法律事務所入所
年間3000件超の相続・不動産問題を取り扱う

(11月22・29日15面に掲載)

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